雨にほんろうされた6時間の戦いは、7号車トヨタ(マイク・コンウェイ、小林可夢偉、ニック・デ・フリース組)が制し今季初の総合優勝を飾った。8号車トヨタ(セバスチャン・ブエミ、ブレンドン・ハートレー、平川亮組)は総合5位だった。GT3マシンで争われるLMGT3では、31号車BMWがクラス優勝した。

予選では地元フェラーリ勢が気を吐き、トップ3を独占。ティフォシ(イタリアの熱狂的フェラーリファン)たちの鼻息も荒い。4番手と5番手にはポルシェ勢が続いた。トヨタ勢は7号車が6番手、8号車が8番手から巻き返しを狙う。

レースは、1周目で3番手スタートの51号車フェラーリが83号車フェラーリをかわして2番手に浮上、ポールポジションからスタートしたトップの50号車と併せてフェラーリワークス勢がワン・ツー態勢を築く。

これとほぼ時を同じくして、多重クラッシュが発生。1周目からセーフティーカーが入ることになる。

開始3時間を過ぎ、コース上の一部では遠目には分からない程度の雨が降り出す。この時点で、フェラーリの2台がワン・ツー態勢。7号車トヨタが続く。

開始3時間25分頃には11号車イソッタ・フラスキーニがぬれた縁石に乗ってスリップし単独クラッシュ。フルコースイエローとなる。

観客が雨がっぱをまといだした開始3時間30分前、フルコースイエロー解除で7号車トヨタのデ・フリースが猛烈ダッシュで2位の50号車フェラーリを抜く。

数分後、12号車ポルシェがコントロールを失いコースアウト。94号車プジョーも左フロントタイヤのバーストに見舞われ、バーチャルセーフティーカーが入る。この間に7号車トヨタはデ・フリースからチーム代表兼ドライバーの小林可夢偉にドライバーを交代。雨が強まり、セーフティーカーも入った開始3時間40分過ぎ、トップは7号車トヨタ。50号車フェラーリ、6号車ポルシェが続く。コースは一部ウエットコンディションとなり、セーフティーカーラン中もコースアウトするマシンが相次ぎ、各車続々とレインタイヤに替えていく。

開始4時間過ぎ、トップ3を占めていたフェラーリ勢もピットイン。7号車トヨタが首位に立つ。8号車トヨタも3位に浮上し、トヨタ勢のタイヤ戦略がうまくいった形となった。

各陣営最後のルーティンピットストップを終え、開始5時間15分時点でトップは可夢偉がドライブする7号車トヨタ。だが、燃料がゴールまでもつかギリギリで、厳しい戦いが続く。6号車ポルシェが2位につける。

開始5時間35分頃、2位の6号車ポルシェに5秒ペナルティーの可能性が浮上。その頃、7号車トヨタは可夢偉の献身的なドライブで燃費の問題をクリア。ペナルティーを考慮すると2位に5秒以上差をつけてトップフィニッシュしなければならない6号車ポルシェは、7号車トヨタをコンマ秒差で猛追する。だが可夢偉はトップを譲ることなく、7秒081差でチェッカーを受けた。可夢偉のWECでの優勝は昨季第6戦富士以来3戦ぶり。

レース後、可夢偉は「チームが素晴らしかった。6号車のポルシェからのプレッシャーもあって、素晴らしいレースになった。この2人(デ・フリースとコンウェイ)も素晴らしい仕事をしてくれた」と、興奮気味に仲間たちへの感謝を口にした。

デ・フリースは「今季初優勝。大成功だ。とてもうれしい。(小林)カムイとマイク(・コンウェイ)に感謝している」と、チーム一丸となって得た勝利をかみしめていた。