<アマチュアボクシング女子:世界選手権>◇2日目◇12日◇中国・秦皇島

 ロンドン五輪出場権が懸かるフライ級世界ランク16位の箕輪綾子(24=フローリスト蘭)が、圧勝で初戦を突破した。同ランク41位のアティナ・マレファキ(ギリシャ)に24-9の判定勝ち。試合前にバンデージの巻き方が規定違反となり、準備運動ができなくなるアクシデントを乗り越えた。生花店経営の母は今日13日の母の日の影響で忙しく、現地入りは14日。13日の2回戦で、最強女王マリ・コム(インド)を倒して、母の日の贈り物にするつもりだ。

 全く相手を寄せ付けず試合を終えた箕輪は号泣していた。「試合前に、いろいろなことが、あって」。おえつが止まらない。いつも通りバンデージを巻いたが、なぜか大会側から違反とされた。何度もまき直して15分以上かかり、準備運動もできずに試合開始。「これで負けたら先生たちに申し訳なくて」。ダウンを2回奪っても、「総合評価は30点。とにかく明日」と気持ちを切り替えた。

 母芳子さんのためにも負けられなかった。所属の「フローリスト蘭」は、母が経営する生花店。今日13日は「母の日」でカーネーションの発注で忙しく、中国入りは14日以降になる。

 コチョウランを育てる農家だった父文男さん(享年44)を心筋梗塞で小6で亡くした。その後、母は生花店経営で生計を立て、3人の子供を育ててくれた。「本当に感謝しています」と話す。

 その母が来る14日を前に最強の壁が立ちはだかる。今日の2回戦の相手はマリ・コム。世界選手権5連覇中。アマチュアボクシング界の顔で「生ける伝説」とされる29歳の最強女王だ。

 ロンドン五輪へは今大会でアジア勢で上位2位以内に入れば確定する。女王を倒せば大きく道は開ける。「明日は人生がかかっている」。必ず勝つ。カーネーションではなく勝利を、そして母が見守るなかでロンドン行きを決めるために。【阿部健吾】

 ◆箕輪綾子(みのわ・あやこ)1987年(昭62)11月4日、栃木県宇都宮市生まれ。格闘家の魔裟斗に憧れて、14歳でボクシングを始める。宇都宮文星女子高、日体大でボクシング部に所属。卒業後は会社員をしながら横浜さくらジムで練習。11年秋に宇都宮の実家に戻り、生花店を手伝いながら作新学院高で練習している。10年世界選手権9位(バンタム級)、12年日本選手権優勝、12年アジア選手権3位(ともにフライ級)。空手、柔道は黒帯。家族は母芳子さんに、長女仁美さん、弟翔太さん。159センチ、51キロ。