日本柔道界の再建を目指して「山下体制」が10月にもスタートする。全日本柔道連盟(全柔連)は24日、東京・文京区の講道館で臨時理事会を開催。冒頭、上村春樹会長(62)が次に行われる10月の理事会での辞任を表明した。後任最有力候補の山下泰裕氏(56)は「5年、10年かかっても柔道界を変える」と立て直しに意欲をみせた。1月に発覚した暴力問題に端を発した柔道界のゴタゴタが、ようやく収束に向けて動きだす。

 午前10時から始まった臨時理事会、山積する議題を前に上村会長が発言した。「今進めている改革のメドが立ったら、会長職を辞めます」。10月に予定される次の理事会までに改革を軌道に乗せて辞任。山下理事の「執行部だけでなく理事全員の責任。私たちも辞職を」という声を「全員辞めたら、改革が続けられなくなる」と言って制した。

 上村会長は会見で、辞任決意の理由として指導者助成金不正受給問題の調査を依頼した第三者委員会の最終答申をあげた。「27人が不正とされた。私の認識不足、組織のガバナンスがなかったし、未成熟だった」と話した。決意したのはこの日の朝。理事会前には、嘉納行光名誉会長にも報告した。ただ、辞任は今ではなく「途中で投げ出すわけにはいかない。あと4、5カ月、次の理事会まで、全力でやりたい」と言った。

 会長の会見を受けて、山下氏も会見。「突然で驚いた」と言いながらも「3月に2人だけで話をした。会長は『この地位(会長)に長くいるつもりはない。改革の道筋をつけて、けじめをつけたい』とおっしゃっていた」と話した。事実上の「後継指名」を受けた同氏は「会長も私と同じ熊本県出身で、肥後もっこす。頑固者なので、周囲から言われて辞めるのではなく、自分の判断で辞めたいと考えたはず」と、上村会長の気持ちを思いやった。

 「今は与えられた暴力根絶の仕事をするのが第一。上村会長の在任中に、できるだけのことはしたい」と山下氏。「その時になったら考える」と明言は避けたが「この機を逃して、次はない。柔道は人づくり、人間教育。もう1度、柔道への信頼を取り戻すことが大事」。上村会長が後任に求めた「柔道100年の計を作れる人」という声に応えるように話した。「覚悟と責任を持って、やっていきたい」。地に落ちた柔道界の威信回復を目指し「世界の山下」は力強く言った。