<柔道:第36回全国高校選手権>◇最終日◇男女団体戦◇21日◇東京・日本武道館◇日刊スポーツ新聞社後援

 20年東京五輪の星、小川雄勢(17)が2冠を獲得した。前日に男子無差別級を制した小川は東京・修徳高の大将として5人の勝ち抜き戦で行われる団体戦に登場。92年バルセロナ五輪銀メダルで全日本選手権7回優勝の父直也氏(45)が見守る中、チームの初優勝に貢献した。重量級復活を目指す日本柔道界に誕生した新星に、全柔連の山下泰裕副会長が、全日本男子の井上康生監督が、大きな期待を寄せた。

 場内に「3、2、1」と試合の残り時間を示すカウントダウンの大合唱が起きた。「0」で優勝が決まった瞬間、小川はスタンドの応援席に向けて右手を高々と上げ、左こぶしを突きだして喜びを表した。控えめだった個人戦とは違う派手なガッツポーズ。「本当にうれしい」。目を潤ませながら、小川は言った。

 「みんなのおかげ」と繰り返した。前日の個人戦優勝の疲れもあって「朝から筋肉痛」だった。「小川に負担をかけないように」と話し合っていた他の4人の奮闘もあって、3回戦までは出番なし。準々決勝以降も、すでに試合をした相手の大将と戦えばよかった。力の差は歴然。決勝の白鴎大足利戦も、相手の指導2で危なげなく勝った。

 山下副会長は「お父さんそっくりな柔道で、将来が楽しみ」と話した。横浜市内での柔道教室で初めて会い、投げられた写真が新聞にも載った。「だから、何となく親しみはある。まだ顔も柔道も幼いけれど、20年にはここ(日本武道館)に日の丸を」と笑った。

 井上監督も「自分の組み手にするのが速い。まだまだ伸びる」と目を細めた。大会前、小川らが出げいこに来た際に、直也氏に「この大会が成長するきっかけになった」と自身の体験を伝えた。小川は父からその話を聞き、大会にかけた。それが2冠につながった。

 「次は高校総体で勝つこと」と小川。6年後については「分かりません」と言ったが、意識しないわけはない。「まだ未完成。これからですよ」と話す父とともに、五輪金メダルという目標を追い続ける。【荻島弘一】

 ◆高校柔道選手権

 毎年3月に東京・日本武道館などで開催。79年に男子団体戦が始まり、06年から女子団体戦も実施。個人戦は86年に女子体重別でスタート。88年に男子無差別が加わり、10年から男女各5階級が行われる。男子団体の優勝は東京・世田谷学園の10回が最多。