<ユース五輪>◇第1日◇17日◇中国・南京

 才色兼備の剣士が躍動した。フェンシング女子フルーレの宮脇花綸(17=慶応女高)が同世代の強豪を打ち破り、ユース五輪では競技初となる銀メダルを獲得した。決勝ではサブリナ・マシアラス(米国)に敗れたが、20年東京五輪の期待の星が結果を残した。中学、高校と有名私立に通う宮脇の武器はその頭脳。ボーイッシュな容姿で、外国人選手との体格差を補ってあまりある知的で積極的な戦いをみせた。

 持ち味の追い上げが決勝でも光った。攻めに出てポイント(点)を失う苦しい展開だったが、2-5で迎えた最終の第3ラウンド(R)で勝機を見いだす。「1、2Rを踏まえて、こうやってくるだろうということがうまくはまった」。約18センチ身長が高い相手の攻撃を誘い出してカウンターを連発。4点連取で一時は6ー5と試合をひっくり返した。

 6-6となり、先に点を取った選手が勝利する延長戦に突入。開始14秒で胸元を突かれ「優勝を狙って準備した大会なので、悔いが残る」としたが、14~18歳の「14人のトップ選手がそろった大会で、刺激になった」と、表彰台の2番目で笑顔ものぞいた。

 その「頭」こそが最大の武器だ。「中学まではできたかな」と謙遜するが、偏差値73の慶応女高に合格。幼少期から勉強は好きだった。特に物事を組み立てる数学と理科が得意。父信介さん(53)は「幼稚園の頃に『2-4=-2』のようなマイナスの概念が分かっていた」と、その理解力を振り返る。フェンシングのフルーレは攻撃権があり、単純に攻めれば勝てるわけではない。展開を見極め、組み立てる能力が必須。決勝のように、冷静に試合中に分析し、巻き返す能力にたけている。

 159センチと小柄だが、小学生時代にはフランス遠征で180センチ以上ある相手とも試合をした。それも1日に何試合もする過酷な「マラソンフルーレ」を戦った。「地頭」の良さは経験でも磨かれ、リーチで劣る今の宮脇を支えている。

 慶応女高を受験したのは「大学受験を避けたかったから」。五輪を意識し、重要な時期を競技に集中したかった。短髪でボーイッシュな容姿は愛らしいが、「あまりかわいいとか言われないんですよ」と話す17歳。「(20年は)地元で23歳で、メダルが狙いやすい大会。リオに出たいのもあるんです」と道の先を見る。取材エリアでは外国メディアに対し、「ここは通過点で、五輪への途中なんです」と英語で答える姿があった。【阿部健吾】<宮脇花綸(みやわき

 かりん)アラカルト>

 ◆生まれ

 1997年(平9)2月4日、東京都生まれ。家族は両親と姉。父信介さんは娘の影響で競技を始め、現在は日本フェンシング協会の常務理事。

 ◆サイズ

 身長159センチ、53キロ。

 ◆競技歴

 5歳上の姉真綸さんがやっており、自宅近くの東京フェンシングスクールで5歳から始める。東洋英和小では全国少年大会優勝。東洋英和中から慶応女高に進学し、ナショナルトレーニングセンターを拠点に練習に励む。13年全日本選手権17位、今年4月の世界ジュニア(20歳以下)で銅メダル、7月の世界選手権は30位。

 ◆花子とアン

 小中で通学した東洋英和はNHK連続テレビ小説「花子とアン」の主人公の出身校。共通点は読書。「この大会も5冊本を持ってきたけど、読み終わってしまって。ミステリーが好き」。

 ◆ドラム

 「フェンシング以外の趣味を」と高1から。週4時間の練習で、「競技に役立つところはあるのかな。周りからはそれが良かったと言われるんですけど」。ちなみに好きな曲は少女時代の「Kissing

 You」。<フェンシング・フルーレ>

 攻撃権を重視する種目。試合開始後、先に剣先を相手の方に伸ばした方が「攻撃権」を得る。守備者は、攻撃者の剣を払うなど相手の攻撃権を阻止した時点で逆に攻撃権(反撃の権利)を得る。このため、攻撃→防御→反撃→防御→再攻撃…と、瞬時に攻守交代が行われるのが見どころ。得点するには、金属を織り込んだメタルジャケットで覆われた、腕、頭部を除く胸、背中など上半身の「有効面」に突きが入ること。

 ◆ユース五輪

 国際オリンピック委員会(IOC)のロゲ会長が07年に提案し創設した、14~18歳が対象の国際総合大会。夏季、冬季とも4年に1度。夏季は、10年8月にシンガポールで第1回が行われ、日本は71人が参加。トライアスロン女子の佐藤優香、レスリング女子46キロ級の宮原優、卓球男子の丹羽孝希らが金を獲得。メダルは金9、銀5、銅3の合計17個。冬季は、12年1月にオーストリア・インスブルックで開催。日本からは32人が参加し、女子ジャンプで高梨沙羅が金を獲得するなど、金3、銀5、銅9の合計17個だった。