<大相撲初場所>◇初日◇11日◇両国国技館

 次代を担う注目の若手2人の初顔合わせは、日本人ホープが制した。東前頭3枚目の遠藤(24=追手風)が、関脇逸ノ城(21)を一方的に寄り切った。まだ大銀杏(おおいちょう)を結えない、ちょんまげ力士同士の幕内対決。午前8時半に満員札止めとなった館内が異様な盛り上がりを見せる中、遠藤が4場所ぶりに初日を白星で発進した。

 関取の象徴である大銀杏が、互いにまだない。そんな2人が土俵に上がった瞬間から、客席のフラッシュが絶え間なく瞬いた。大きな声も飛び交い続けた。「遠藤、頑張れ!」「逸ノ城!」。「異常だったね。本日一番の盛り上がりだった」と朝日山審判長(元大関大受)が感じた若手対決は、遠藤が一方的に勝った。

 手をつくまで14秒の駆け引きの末、立ち合いで鋭く踏み込んだ。突き放して、まわしは許さない。これが大型力士対策。もろ差しで低く潜り、一気に寄った。逸ノ城の左足が蛇の目の砂を払い、審判2人が「勝負あり」と手を挙げても、力を抜かず取り続けた。最後まで集中していた。「僕の方が体が小さい。中途半端に当たってもよくない。しっかり当たれて良かった」。注目の一番に懸かった22本の分厚い懸賞をつかみ取る直前、少しだけ笑った。

 昨年の話題を二分した2人だが、出世競争で先を越された逸ノ城に、注目は移った。遠藤はそれを利用した。「見返してやろうという気持ちはなく、それより稽古場にカメラがいないので、しづらかった稽古ができるようになりました」。

 1年前の年末年始はテレビ局を渡り歩いた。だが、今回はすべて断った。「テレビに出るために頑張っているんじゃない、というのを自覚しないとダメだ」。入れ替わるように出演した逸ノ城を横目に、時間を今年のために充てた。昨年末に4日間、出稽古に来た相手の重さを実感し、前に出る力を蓄えた。56キロの体重差は、まるでなかった。

 昨年の最初の一番は黒星。今年は白星で幕を開けた。「新年最初をいい相撲で白星を飾れて良かった」。埼玉・草加市の部屋で生活して、間もなく2年。「出先から戻って見覚えがある景色を見ると『帰ってきたな』と思うようになった。ここの生活が染みついてきたのかな」。公言する三役へ。上位で戦う力が染みついてきた。【今村健人】

 ◆大相撲の懸賞金

 提供団体は懸賞旗1本につき懸賞金6万2000円と懸賞旗制作費約5万円を協会に払う。6万2000円のうち事務経費を除いた5万6700円が力士手取り。うち2万6700円は納税充当金として天引きされ、のし袋には懸賞旗1本につき現金3万円が入る。