東京6大学、東都大学リーグの進路がほぼ出そろった。ハイレベルな東都秋季リーグを初めて制し、神宮大会でも初優勝した立正大。その立役者となった小石博孝投手(4年=鶴崎工)は、新たな舞台として社会人野球のNTT東日本を選んだ。ドラフト指名が確実視されるなかでも、あえてプロ志望届を提出しなかった。その目は東京ドームのマウンドを、そしてさらにその先を見据えている。

 早すぎた決断-。周囲にはそう見えても、当の本人には迷いも後悔もなかった。「自分で決めて、それで断ったら失礼。それに自分にはハイレベルなマウンド経験が足りない。プロはそれからでも」。遠回り、と言う人もいる。それでも自分を冷静に見つめ直して決めたからこそ、ぶれはない。「社会人で日本一になれば雑音は消せる」と自信にあふれている。

 6月に決めた。専大との入れ替え戦2試合に先発し、連勝での1部残留に貢献した後だった。この時はまだ4年春までリーグ戦0勝3敗の左腕。その決断に注目が集まることはなかった。ただ入れ替え戦で投球のコツをつかんだ。「ブルペンでバッターを立たせている感覚で投げればいいんだと分かった。入れ替え戦が自信になった」と振り返る。

 秋の神宮に、これまでの制球に苦しむ姿はなかった。リーグ戦初勝利を含む3勝2敗、防御率1・74と活躍した。ラストシーズンで大化けした左腕に、ネット裏のスカウトは色めきたった。それでも周囲に流されず初志を貫いた。

 特徴は球の出どころが見にくいフォーム。大学の先輩、日本ハム武田勝をほうふつとさせるが「『参考にしてるの?』ってよく聞かれる。自分が投げやすいように投げてただけなんですけど」と笑う。“天然物”の変則フォームを武器に社会人でも大暴れを誓う。見据えるのは2年後のプロ入りだ。立正大へ進学したのは、ただ野球を続けたかったから。プロなんて考えもしなかった。しかし今回は違う。自分が決めた道こそ、プロでの活躍に続く道だと信じている。【亀山泰宏】