顔に少し明るさが戻っていた。3月中旬。大阪・舞洲にあるオリックス球団施設で、高卒2年目の内藤鵬内野手(19)が右腕1本のティー打撃を行っていた。左腕はギプスで固定。見た目は痛々しいが、人懐っこい笑顔で言った。

「あれはもう、練習じゃないです。ストレス発散です。膝の時に比べたらやれることは多いですけど、痛みは膝の時がマシ。めちゃめちゃ痛かったです」。キャンプ中の2月中旬に左肩を脱臼して手術を受けた。聞けば退院してまだ3日だという。

2週間の入院中を「地獄」を表現した。苦しみをリアルに振り返った。

「肩が外れた時も痛かったけど、手術終わってからが一番痛かったです。また外れたかというぐらいの痛さ。麻酔が効いていたんで、終わってすぐはあまり痛くなかったんですけど。それが深夜2時ぐらいに切れて。地獄でした。ナースコースで『どうしました?』と言われて『早く来て下さい。めっちゃ痛いです!』とお願いしました。『点滴入れて下さい!』と言って、痛み止めを入れてもらいました」

ベッドに横たわると肩が後ろに移動する感じがして痛みが増した。そんな苦しみで眠れず、ベッドに座って寝ていたという。

日本航空石川で高校通算53発を放った長距離砲。22年ドラフト2位で入団した。1年目から2軍で主に4番として起用されるなど、将来の有望株だ。昨年5月の左膝半月板損傷の大けがを克服し、同10月のフェニックス・リーグで復帰。今年のキャンプ序盤は「野球をやらない期間が長いと、やっぱり野球が一番やなと思います」と話すなど、元気な姿で練習に励んでいた。それなのに、再び試練に見舞われた。

「2週間ぐらいで固定が外れる。これが取れたら汗をかける。ジョギングとか少しずつできるそうです」。実戦に出場できるのは夏以降になりそうだ。

この日、センバツ出場した母校の応援に駆けつけていた。残念ながら初戦敗退となったが、後輩の奮闘する姿は励みになったはず。2度の大けがを乗り越え、復活する姿をファンも待っている。【オリックス担当=大池和幸】

オリックス対日本新薬 1回表日本新薬無死、根路銘の打球を捕球した際、左肩を痛めた内藤(左)(2024年2月17日撮影)
オリックス対日本新薬 1回表日本新薬無死、根路銘の打球を捕球した際、左肩を痛めた内藤(左)(2024年2月17日撮影)