「菅生のしんちゃん」は、強い相手に燃える宇宙人だから大丈夫。第87回選抜高校野球大会(21日から12日間、甲子園)の組み合わせ抽選会が13日、大阪市内で行われた。投打でプロ注目の勝俣翔貴投手(3年)擁する東海大菅生(東京)は、夏春連続Vを目指す優勝候補、大阪桐蔭と対戦する。(学年は本日から新学年で表記します)

 驚きを通り越して、思わずニヤけてきた。東海大菅生・江藤勇治主将(3年)がクジを引くと、対戦相手を見た瞬間に口元が緩んだ。9年ぶり出場の甲子園、初戦の相手は優勝候補の大阪桐蔭に決まった。開会式後の大会第1日、さらに地元校との対戦で、スタンドは超満員が確実。元中日投手の若林弘泰監督(48)は「もう笑うしかないですよ」と何度も繰り返した。

 頼みの綱は、強い相手に燃える男、勝俣だ。男らしいキリリとした太めの眉毛はアニメ「クレヨンしんちゃん」の主人公、野原しんのすけ似と評判。さらに、若林監督は「宇宙人ですから。プレッシャーなんて感じないです。一番楽しみにしているのは本人だと思います」と言った。重圧とは無縁の精神力が、大一番で生きると踏んでいる。

 当の本人は、抽選会には出席せずに、東京・あきる野市のグラウンドで“吉報”を聞いた。ブルペンで30球の投球練習を行い、いつも以上に声を張り上げて走った。「いつもできない相手とできる。興奮しました。甲子園の常連校ですが、名前負けだけはしないようにしたい」と言った。

 昨秋の公式戦は10試合で7完投。11日の桐光学園(神奈川)との練習試合では、自己最速を1キロ更新する143キロをマークした。8回4失点でまとめると、打撃では3番として、右中間に高校通算16号本塁打をたたき込んだ。練習試合解禁以降、2試合連続3安打と、自慢の打撃は絶好調だ。

 昨秋の東京大会準々決勝では甲子園の常連校、帝京戦で2失点完投。左手小指の粉砕骨折から復帰した昨年8月は、横浜(神奈川)相手にノーヒットノーランを達成した。強敵は大好物。「強いチームが相手だと、やってやろうという気になるんです」。おとこ気あふれる「菅生のしんちゃん」が、人生最大の大物食いに挑戦する。【前田祐輔】

 ◆勝俣翔貴(かつまた・しょうき)1997年(平9)7月20日、神奈川・箱根町生まれ。箱根の森小1年から、「箱根フリッパーズ」で投手兼遊撃手として野球を始める。箱根中では「小田原足柄シニア」に所属。東海大菅生では1年夏から一塁手として出場し、高校通算16本塁打。変化球はスライダー、カーブ、フォーク。家族は両親、妹、弟。177センチ、77キロ。右投げ左打ち。

 ◆東海大菅生の甲子園成績 センバツは97年、06年に続き9年ぶり3度目の出場で、初勝利を目指す。97年は初戦で3-4と報徳学園(兵庫)に敗れ、06年の初戦は10-11で秋田商に惜敗。夏の甲子園は96年、00年と2度出場し、96年は1回戦で8-7と益田東(島根)に勝利。2回戦で松山商(愛媛)に敗れた。00年は初戦敗退した。