仙台ベンチには懐かしの姿があった。18年に同校を卒業した笹口大輝さん(26)が、この春から部長に就任した。かつて、がむしゃらに夢を追いかけていた青年から一転、教え子であり、後輩でもある選手らの背中を押す存在となった。今春センバツ出場の東北との一戦。0-2で迎えた5回、大粒の雨にも苦戦し大量失点。コールド負けで県切符を逃した。笹口部長は「夏に向けてもう1度、スタートしよう」と声をかけ、98年夏以来の甲子園出場に向けてかじを切った。

高校時代は西武・佐藤隼輔投手(26)の女房役を務め、主将としても夏8強へと導いた。卒業後は東北学院大へと進学。軟式野球部に所属し、日本代表にも選出された。その後は教員の夢をかなえ、初任地の仙台工で4年を過ごした。初年度はラグビー部、2年目からは軟式野球部の顧問を務めた。

「帰ってきた」。この春から母校の教壇に立つ。汗と泥にまみれながら青春時代を過ごしたグラウンドへも。恩師の石垣光朗監督(62)とタッグを組む。「頼むぞ」。その言葉には、再び教え子とグラウンドに立てることへの喜びと期待が詰まっていた。現役時代と比べて部員数は減少していたが、伝統はしっかりと引き継がれていた。

石垣監督は当時から人間性を重んじる指導を大切にしてきた。「知らない方がグラウンドの横を通った時、野球部を見て元気を与えられる活動をしよう」。愛されるチームを目指してきた。あの頃と何一つ変わっていなかった。笹口部長は「野球に対する向き合い方だったり、そういうところは変わっていなかったので安心したというか、うれしかったです」と、OBとしての顔ものぞかせた。

この伝統を守り続けるために、並々ならぬ覚悟を持って母校へと帰ってきた。「以前の先輩方が作り上げてきた伝統を、次へとつなげるという思いは教員になっても持ち続けています」。もちろん、目指す場所も変わらない。「子どもたちの夢をかなえさせてあげたいです」。次は指導者として-。母校で過ごす2度目の青春物語が幕を開けた。【木村有優】