第88回選抜高校野球大会(3月20日から12日間、甲子園)の出場校が29日、発表され、山梨県から東海大甲府が25年ぶり5度目の出場を決めた。昨夏、甲子園3回戦の早実(西東京)戦で味わった“清宮ショック”を糧に、菊地大輝投手(2年)と松葉行人投手(2年)が、たくましく成長。村中秀人監督(57)は2枚看板を武器に、優勝を狙いにいく。

 あの屈辱の経験も無駄ではなかった。昨夏の甲子園3回戦で早実と対戦、4-8で完敗した。怪物清宮に本塁打を打たれた菊地投手が言った。「あれは、一生残るもの。そういう意味で、全ての面で成長させてもらった」。全国から注目されたポッチャリ体形は引き締まり5キロ痩せた。真剣に走り込んだ成果だ。早実は出場しないものの「清宮がいる、いないに関係なく、目標は全国制覇。自分たちの野球をやりたい」。優勝という別の形で、悔しさを晴らすつもりだ。

 早実戦で2番手登板した松葉投手も、あの試合があったからこそ成長できたという。「左打者の内角に投げるのが苦手だった。早実戦はそれで打たれたので、重点的に練習し克服した。だから今がある」。センバツ出場を決定づけた秋季関東大会で好投を連発。菊地との2枚エースの座にまで駆け上がった。「背番号1は自分がつけたい」と公言。菊地も尻に火がつき、2人して成長に拍車がかかった。

 村中監督は「松葉は心配していない。菊地がどれだけ成長してくれているかが、センバツで優勝できるかのカギになる」と言う。秋のシーズンが終わり、冬練習に入った頃、菊地に「150キロを目指せ。直球で空振りを取れるボールをつくろう」と助言した。清宮に本塁打を打たれたショックを乗り越えた右腕に、その言葉はすんなり入っていった。直球を磨くため、日常生活でもボールを握りしめ、指先の感覚を鍛える姿が見られるようになった。

 東海大相模を率いて92年のセンバツで準優勝を経験している村中監督は「相模の時は投手力で決勝に行ったけど、今のチームにも力強い投手が2枚いる。25年ぶりに(甲府に)春が来た。出るからには、初戦を突破して山梨に紫紺の優勝旗を持ってきたい」。全国に“清宮ショック”を振り払った姿を披露する。【竹内智信】

 ◆東海大学付属甲府高等学校 1946年(昭21)山梨高等経理学園として塩山市(いまの甲州市)に開校。59年に現在の所在地に移転し、14年から現在の校名になった。私立共学の普通科高校で生徒数は768人。野球部は58年に創部。部員数118人。甲子園出場は春が5回目、夏は13回。主なOBにはヤクルト村中恭兵、中日高橋周平、日本ハム渡辺諒らがいる。山梨県甲府市金竹町1の1。森永州一校長(59)。