<全国高校野球選手権:報徳学園2-1新潟明訓>◇19日◇準々決勝

 報徳学園(兵庫)は田村伊知郎投手(1年)が、8回2死まで1失点に抑える好投で、全国制覇した81年以来29年ぶりの4強に導いた。

 アイシングした右手に水が入ったコップ、左手にグラブを持ち、田村は「頑張ってください」と、エース大西に歩み寄り、9回のマウンドに送り出した。「どうしても一言、伝えたかった」。自分が残したピンチを抑え、最終回に向かう先輩にすべてを託した。

 初戦に続く2度目の先発。背番号11の15歳は闘争本能をむき出しにした。4回1死二塁、間藤(まとう)を内角高めの直球で三振。5回1死一塁、山本を内角低めの直球で併殺にとった。いずれも捕手の構えと違う逆球だ。「失投と思うけど、全力で投げて打ち取ったことに意味はあります」。7回にこの日最速の142キロ。7回2/3で高校入学後最多の106球を投げ、5安打1失点。4四死球、9奪三振という荒々しさでもぎ取った。

 18日、永田監督から「気迫が足らん。報徳のユニホームを着た気持ちが全然出てない」と叱咤(しった)され、気持ちを切り替えた。準決勝では対戦を希望していた興南・島袋と対戦する。「投げれば、負けないようにしたい」。表情がグッと引き締まった。【加藤裕一】