ニィ~! 阪神マット・マートン外野手(33)が2回、今季1号となる先制ソロを放った。ここまで不振に悩んだが、リーグ戦再開初戦でスタン・ハンセンのラリアットばりの一振りがさく裂。今季出場62試合、254打席目のアーチで勢いづけ、ヤクルトに6連勝だ。首位巨人と1・5差は変わらずも、不沈艦タイガースは、2位に浮上した。

 「ウエスタン・ラリアット」のような一撃で甲子園のムードを変えた。マートンに待望の本塁打だ。2回1死。カウント3-1からヤクルト石川が投げた真ん中高め、104キロカーブを捉えた。払うように打った打球は左翼へ一直線。「自分としてもやっと1本出た」と待ちかねた1号先制ソロだった。今季出場62試合目、254打席目の1発にベンチは祝福に沸き、スタンドはお祭り騒ぎになった。

 「いい勝利だったと思う。1試合1試合、自分のやるべきことをやっていく。それだけです」。ヤクルトに6連勝でチームを2位に押し上げる活躍にも浮かれることはなかった。それでも4回にも石川の変化球を捉え、中前へライナーの安打。7回2死一、三塁からの中飛も芯で捉えた当たりだった。試合前、甲子園を訪問したプロレスラーのスタン・ハンセンと初対面。歓談しながら、がっちり握手し「不沈艦」のパワーを注入していた。

 交流戦終了後の17日、オフを返上して1人で打ち込みを敢行。18日の全体練習後は和田監督らと約90分、打撃について話し合った。ナイトゲームでも朝から球場を訪れ、ビデオでチェックする姿がある。苦悩の陰で行った努力がひとまずは実った形だ。

 ただ取り巻く状況は簡単ではない。不振のマートンについて球団内部には“デッドライン”が設けられている。リーグ戦再開から来週辺りを区切りとし、復調気配が感じられなければ、新加入ネルソン・ペレス外野手(27=BCリーグ・石川)の状態次第では入れ替え、さらには「7人目の助っ人」取りが現実になる可能性もある。崖っぷちに立っていることに変わりはないのだ。

 本塁打の後、ベンチでハイタッチした和田監督は期待を込めて言う。「本塁打はやっと出たという感じ。その後も内容はよかった。明日(21日)以降も見て、内容がよければ上がってくると思う。(ペレスの加入で)左右される選手ではないと思うけれど早く(状態を)上げてほしい」。

 M砲の完全復調は、どんな策より、記録的接戦の予感がするペナントレースを勝ち抜くための特効薬になるのは間違いない。【編集委員・高原寿夫】