冷めない興奮までクールダウンするように、ヤクルトのミッチ・デニング外野手(26)はベンチに戻ると頭に氷を乗っけて涼んだ。逆転されて1点を追う6回1死一塁。巨人菅野の甘く入った146キロをバックスクリーンにたたき込んだ。再逆転の2ランに「この試合の重大さは知っていたからね。チームに貢献できて良かったよ」。3タテを免れ、首位巨人に1ゲーム差で食らいついた。

 得点圏打率3割超えの勝負強さが身上。7月2日以来の1発が、これ以上ないタイミングで出た。「こうしてNPBで優勝争いができて幸せだ」と白い歯を見せる。推定年俸1億1000万円の昨季リーグMVP右腕に、独立リーグ出身の360万円助っ人が打ち勝った。チームとしても菅野には神宮で5戦3勝無敗。真中監督は「流れを引き寄せてくれた」と大感謝。右寄りの守備シフトにも動じず、マルチ安打の活躍だった。

 シーズン途中にBC新潟からやってきた。「みんな『オーストラリア出身だから大丈夫だろ』って言うけど、東京は新潟よりオーストラリアより暑いよ」。格安助っ人が、神宮にどこよりも暑い風を吹かせた。【鎌田良美】