日米球界を渡り歩いたレジェンド、元ロイヤルズ野茂英雄氏(47)が、全力投球で1万7980人のファンを沸かせた。「名球会セ・パ対抗戦」の4回から登板。トルネード投法から、宝刀フォークを織り交ぜ、2回3失点ながら勝利投手になった。試合は全パが7-5で全セを破った。

 随所に笑顔あふれたフレンドリーな対抗戦の中、野茂氏はニコリともせずにマウンドに立った。ゆったりと振りかぶり、体をひねる往年のトルネード投法に、球場の空気が変わる。4回の先頭打者、宮本氏を直球2球で追い込むと、真ん中低めにストンと落とす110キロのフォークで3球三振に切った(記録は振り逃げ)。立ち上がりからお遊びなしの真剣勝負を、体全体から醸し出した。

 ヤフオクドーム(当時福岡ドーム)は、93年4月17日、同球場初の公式戦に先発し、1-0で完封した思い出の球場。「今も継続して応援してくれているファンの方がいる。今の僕なりにはできたと思います」と言った。

 ベンチからは野茂氏の投球を、清原氏が携帯電話で撮影するなど、味方からの注目度も抜群。投球後のテレビインタビューで、全力投球で相手が本気になったと問われると、「全員真剣ですよ。みんな真剣にやってます」と真顔で切り返した。全力プレーこそ、何よりのファンサービスだと信じて腕を振った。

 日米通算201勝(155敗)を挙げたパイオニアが、名球会のイベントに参加するのは初めてだった。

 「今は裕福な時代になって、野球をやる子も少なくなってますけど、プロ野球選手やメジャーリーガーを目指している選手は多い。野球界に何かできないかと考えながら、行動はしているつもりです」

 20年東京五輪で種目復活を目指す野球・ソフトボールだが、野茂氏はさらにその先の未来を見る。

 「僕個人の考えでは、東京だけで終わる野球・ソフトでは、あまり良くないと思ってる。やはり、野球をやる国を増やしていくような活動をしていかないといけないと思っています」

 全力で投げ、球界の未来を真剣に考える。野茂氏らしさ満載の1日で、野球ファンを満喫させた。【前田祐輔】