【グアム(米国)19日=浜本卓也】球界きっての「中立男」が、「○×」式インタビューで本音を明かした。巨人長野久義外野手(31)はプロ6年目の昨季、自己ワーストの打率2割5分1厘と不本意なシーズンを送った。なかなか本音を口にしない長野に、○×プレートを手渡すことに成功。背番号にちなんだ「7」つの質問をぶつけた。選手会長に就任して迎える今季、今の正直な思いを語った。

 「さあ、やりましょう!」。自主トレを終えた長野が、笑顔で切り出した。長野と言えば、自分の発言によって相手がどう感じるかを配慮するため、ハッキリした発言は好まない。だが、グアム自主トレが順調なのもあるのだろう。グラウンド脇に腰を下ろし、○×プレートを握った。

 ◆Q1 去年の成績には腹が立つ?

 迷わず○だ。「打つ、投げる、走る、守る。全部が実力不足でした」。打率2割5分1厘は自己ワーストで、打点52は同タイ。本塁打15も物足りない。14年オフに右ひざと右肘の手術をした影響もあったはず。だが、首を横に振った。「いつ成績が悪くなるか分からない世界。だめな時は、実力がないんだと思ってやらないといけないんです」と珍しく語気を強めた。

 ◆Q2 自分の実力は、こんなものじゃない?

 ○を期待する質問者の顔をのぞき込むと、「△です」とニヤッと×を添えた。「自分ではもっとできると思いますけど、できるって言って期待されすぎても困るので(笑い)」と、いつもの長野節。だが○の札をジッと見つめ、続けた。「去年の成績は、これからの野球人生でないようにしていかないといけない。後輩たちに『まだまだかなわないな』と思わせるように頑張らなきゃと思っています。競争意識はすごく大事だと思う」。言葉に熱が帯びてきた。大記録挑戦の意欲もあるのでは…。

 ◆Q3 巨人初のトリプルスリーを狙ってみたい?

 「無理ですね」。×と断じた。「打率は何とかクリアできるかもしれないけど、本塁打と盗塁はきつい」と自己分析した。では、打撃部門のどこにこだわるのか。答えは意外だった。「今年は守備。ここ2年、良くなかった」。11年から3年連続でゴールデングラブ賞。打者の特徴や配球を読んで絶妙に守備位置を変えるセンスも抜群で、13年にはライトゴロを3度も決めた。だが14年以降は補殺が「4、2」と、13年(8)の半数以下に減少した。「もう1回鍛え直してチームを守備で助けられるようにしたい。目標の数字は決めない。できるだけ走者を(次の塁へと)回されないように。『長野のところに打球が飛んだらストップ』という風に」。守備は好不調の波が少ない。本来の守備力さえ取り戻せば、常にチームに貢献できる。俯瞰(ふかん)的にチームを見る、長野ならではの視点だろう。だからこそ、選手会長を任された。

 ◆Q4 正直、荷が重い?

 「◎です!」と○を2つ挙げた。記者の名前は1度会えば覚える頭の良さに、優しい物腰、ユーモアのセンス。適任の声が多いが「人前で話す機会が多くなるので、それが荷が重くて…。考えるだけで嫌です。一応、話すことは紙に書いているんですけど、どうにか人前で話さないでいいよう、勇人(坂本主将)にお願いしようと思っています」と一蹴した。この笑顔にだまされてはいけない。13年オフに1度辞退した会長職の受諾には、長野なりの覚悟があった。新指揮官に関する質問で垣間見えた。

 ◆Q5 高橋監督は昨年まで選手だった。やりにくい部分もある?

 「選手をやめられる時はすごく寂しい気持ちになりましたけど、相当な覚悟を持って就任された。その分、監督の思いもしっかりと背負って戦っていかなきゃいけないと思います」。今年で32歳。選手会長として引っ張る決意が、尊敬する監督への思いににじんだ。

 ◆Q6 引退後は、野球以外の仕事をしてみたい?

 「たぶん、指導者の仕事はできないと思うんです。人に教えるってすごく難しいと思うので」と苦笑いした。では何をしたいのか。オフには相撲部屋入門にフットサル、農作業体験など、興味の幅は広い。「欧州とか、いろんな外国に行ってみたい」。海外で見聞を広げたい好奇心を明かしたが、すぐに「まだまだ現役で頑張りますよ!」と声を張った。今年、どうしてもやりたいことがある。

 ◆Q7 高橋監督を絶対に日本一の監督にする?

 「みんなで絶対に胴上げしたいと思います! 監督になられたので、僕はあまり怒られないように頑張ります(笑い)」