小久保裕紀監督(44)率いる侍ジャパンが、“懐刀”を繰り出して台湾に連勝した。1点を追う4回、先頭の菊池涼介内野手(25)が相手の虚を突くセーフティーバントを敢行。ミスを誘って三塁まで進み、すぐさま同点に追いついた。投手の継投も2日連続でビシッと決まり、日本が世界に誇れる長所を発揮した。1年後のWBC本番に向け、十分な予行演習になった。

 侍に忍者が潜んでいた。守備の乱れに重盗を絡められ、嫌な1点を失った直後の4回。先頭の菊池が狙っていた。台湾の投手は2番手の潘威倫。182センチ、98キロのサイズで、動作もゆったりしていた。「流れを取り戻したい」。代わりはなの初球に虚を突いた。

 バッテリーの中間点に、セーフティーバントで転がした。慌てて一塁に投げようと振り返ると、菊池はもうヘッドスライディングをしていた。動揺に拍車を掛け悪送球を誘う。外野も判断が遅れる。もう1回頭から滑った。「何とかしたい気持ちが形になった」。ダブルエラーで三塁を陥れた。塁上で胸の「JAPAN」を張って手をたたいた。4番筒香の犠飛で追いつくまでに要した球数は6。風向きを変える速攻だった。

 取られたら、すぐ取り返す。国際試合の鉄則に従った。劣勢で回が進むほど、選手もベンチも焦りと狂いが生じる。過去の手痛い敗戦が教えてくれた。3、4回の攻防こそ、最高の生きた教材だった。

 足、研究、投手力。日本のストロングポイントで勝負する。今回の強化試合には志田スコアラーが呼ばれている。本番ではない代表戦のスコアラー帯同は初めてだった。「WBCで当たるかも知れない。『見てほしい』ということだと思います」。昨年のプレミア12を分析して伝えていた相手の穴が、菊池のワンプレーに凝縮されていた。

 WBC過去3大会の盗塁数は、いずれも日本がトップだ。エンドランの企画が3度。盗塁1個。9回は三塁走者の坂本にゴロゴー。足を強調して、勝ち越しとダメ押し点を奪った。投手陣も総じて好調。連勝の小久保監督は「そう点は取れない中で、菊池がアイデアでミスを誘って。常に次の塁を狙う。ああいう面が日本の良さ。今回のデータもしっかり分析して、1年後に備えたい」と話した。世界に通ずる「野球」の方法論で挑む。【宮下敬至】