開幕1軍、見えた! 楽天ドラフト1位のオコエ瑠偉外野手(18=関東第一)が、西武とのオープン戦でまたまた打った。同点で迎えた9回1死一、二塁の勝ち越し機に、決勝適時打となるセンター返しを決めた。幼少期に通い詰めた西武プリンスドームへ堂々の凱旋(がいせん)。オープン戦は残り5試合。このまま球団史上初となる、高卒新人野手の開幕1軍が見えてきた。

 ほんの6年前までスタンドから眺めた世界のど真ん中で、オコエが開幕1軍という夢をかなえようとしている。同点で迎えた9回1死一、二塁。「チャンスの時は特に集中できている気がします」と、真ん中の甘い直球を見逃さない。猛練習で身につけたコンパクトなスイングから、決勝打を中前へ。「スライダーを頭に入れて対応しました。映像を見たらきれいに飛んでましたね。よかった」。完璧な一打に声色も弾んだ。

 車で約15分だった東京・東村山の実家から何度も通った球場に、1軍選手として帰ってきた。「練習の時に、ホームベースから初めてカブレラさんの180メートル弾の場所を見たんです。あり得ないっすね」。かつて憧れた選手と同じ目線に立てた。5歳時にトリプルスリーを目撃した松井稼からは、同僚として明快なアドバイスをもらった。「変化球は遅いから、間に合うわ」。直球を待ちながら変化球に対応すればいい。心の余裕が決勝打を生んだ。

 ここぞの場面で驚異的に1本が出る。この一打で紅白戦を含む実戦の得点圏は10打数5安打の打率5割、打点はチームトップ11。オープン戦打率は1割6分7厘でも、梨田監督は「試合の中で修正して、結果を出す。(2軍に)落とす必要がなくなってきた」と感嘆。池山打撃コーチも「もう1軍に入る入らないじゃない。1軍で活躍できるかどうかという段階になっている」と驚きを伝える。

 その存在は球界全体の関心事となってきた。西武のキャプテン栗山は、試合前練習で発見した向学心あふれる姿が忘れられない。

 西武栗山 打撃練習で失敗した瞬間に「ダメだ」という顔をして、次の球からすぐ修正方法を探していた。そこがすごい。だからこれだけ伸びるんだと思う。

 オープン戦も残り5試合となった。高卒新人野手の開幕1軍は球団史上初。歴史的瞬間が、確実に近づいている。【松本岳志】

 ◆開幕1軍登録 楽天の新人では07年嶋捕手、13年則本投手ら過去14人が名を連ね、すべて大学か社会人出身。高卒新人の開幕1軍はまだない。07年田中(現ヤンキース)は開幕からローテーション入りしたが、1軍登録は初登板初先発した開幕5戦目(3月29日ソフトバンク戦)の当日だった。高卒新人で開幕1軍入りすれば、13年の藤浪(阪神)大谷(日本ハム)以来となる。