22歳の誕生日を首位浮上で飾った。阪神藤浪晋太郎投手が、DeNAを7回途中3失点に抑え、開幕3連勝をマークした。今季初の甲子園登板は、プロ初の激走三塁打もマークした。それでも、6連戦の初戦に、6回1/3で救援を仰いだ自分が許せない様子。巨人が負け、広島が勝ったため、3チームが首位に並んだ。熱い混セを演出した若きエースの心意気も、実に熱かった。

 躍動した。5回だ。藤浪は、先頭打者で打席に入る。2球で追い込まれると、3球目の外角高め速球に、バットを振り抜いた。打球は右中間を破った。右腕は疾走し、三塁にスライディングした。プロ4年目、初めての三塁打だった。次打者・高山は初球を中犠飛。右腕は、貴重な4点目のホームを踏んだ。

 その後が問題だった。3点リードの7回にほころびがでた。先頭ロペスの平凡な遊ゴロを名手鳥谷がまさかの後逸。ここから1四球2連打で2失点したところで降板を告げられた。6回1/3を9奪三振3失点。初のバースデー勝利でチームの連敗を2で止め、開幕から3連勝を飾りながら表情は晴れなかった。とても首位に浮上した、勝者の顔には見えなかった。「いいピッチングとは言い難い。先発としての役目を果たせなかった」。藤浪は22歳の誕生日を白星で飾った直後、自らをバッサリ斬り捨てた。

 誕生日を喜ぶ人がいた。

 「おめでとう」

 前日11日深夜。日が変わるころ、母明美さんから携帯電話にメールが届いた。「ありがとう。頑張ります」。すぐに感謝の気持ちを返信し、眠りについた。

 先週末、母は大阪・梅田にある阪急メンズ大阪の館内を歩き回っていた。「これやったら着てくれるかな」。インポートブランドの高級Tシャツを購入。息子の誕生日用にラッピングしてもらった。「日本製のXLだとサイズが合わないから…。ちょっと高くなるけど」。わざわざ丈が長く、胴回りがダブつかない外国製を選んで保管してある。

 昨年のプレゼントは靴下だった。身近な衣服量販店では置いていない、30センチサイズを探し回った。この日は家族で甲子園を訪れ、息子のピンチに手を合わせる母の姿があった。

 仲間、そして家族…。支えてくれる人たちに白星を届けた。それでも納得できない。6連戦の初戦を任される立場。救援陣5人の助けを仰ぐ形となり、悔しさが喜びを大きく上回る。

 「どうでもいいです」

 バースデー星を問われ、自嘲気味に吐き捨てるように言った。

 「チームに借りができた。来週以降はしっかり借りを返せるようにしたい」

 22歳。怒りは力に変えられる。【佐井陽介】