覚せい剤取締法違反(所持、使用、譲り受け)の罪に問われた元プロ野球選手清原和博被告(48)の初公判が17日、東京地裁(吉戒純一裁判官)で開かれ、清原被告は起訴事実を認めた。弁護側が父洋文さんからの手紙を朗読すると涙があふれた。情状証人として出廷した佐々木主浩氏(48=日刊スポーツ評論家)の尋問や被告人質問でも泣き続けた。公判は即日結審。法廷で薬物との決別を誓ったが、検察側は「再犯の可能性が高い」として懲役2年6月を求刑した。判決は31日に言い渡される。

 法廷に現れた清原被告の表情に、逮捕時のような険しさはなかった。紺色のスーツ、白いシャツに白い小さな水玉模様の入った紺色のネクタイ。伸びた髪はセットされ、ヒゲはそっていた。ふっくらした印象だが、胸を張る「番長」の面影はない。肩をすぼめ、うつむき、何度も泣いた。

 「まず、再犯しないこと。和博が想像する以上に厳しいことだと思います。親としてできるかぎりの支援をしたい」。狭心症のため、大阪から上京できなかった高齢の父洋文さんの手紙を、弁護人が読み上げると、清原被告の目から大粒の涙がポロポロと落ちた。

 弁護側の情状証人として出廷した佐々木氏の証人尋問でも涙が止まらない。「彼は今でも野球人。何か野球のことを彼と一緒にやっていきたい」。親友を直視できなかった。

 弁護側の被告人質問で、清原被告は覚醒剤を始めた時期を「引退してまもなく」とし、現役時代の使用は否定した。「ストレスやプレッシャー、不安は全て野球で解決できたが、引退後は解決方法がなくなり、故障で足も動かなくなり、薬物に負けた」とした。

 プロのユニホームを着たのは86年2月1日。弁護側から30年後の今年2月2日に逮捕された気持ちを問われ「情けない」と話した。2人の息子に対しても「申し訳ないと思っています」と声を絞り出した。

 薬物依存症からの回復に向けた決意も表明した。弁護人に「今後はやめられるか」と問われると「逮捕されていろいろ本を読んで勉強し、大変怖い薬物だと分かった。寿命が来るまで闘い続けたい」と話した。

 佐々木氏からは野球を通じた更生の申し出もあったが「野球を更生のために利用するのは野球に対して失礼。まず、心と体を健康にして野球に向き合いたい」ときまじめさも見せた。

 覚醒剤の使用、所持の初犯の場合、執行猶予付き判決が相場だが、清原被告は、より重い「保護観察付き判決」を希望。「(保護観察所による)薬物依存更生プログラムを受けて、何が何でも更生したい」。回復に向けた強い気持ちをのぞかせた。佐々木氏も公判後「あの涙を見れば本気だと思う」と話した。だが、本気でも簡単にはやめられないのが薬物依存症だ。

 検察側の被告人質問では、2月の逮捕前に薬物依存症からの回復のためにカウンセリングや治療を受けたと告白。「やめられるつもりでいた」としたが、逮捕に至った。本当に断つことができるのか。検察側の指摘に、清原被告は「前の自分とこれからの自分は決定的に違う」と強い決意は示したが、具体的な根拠は示せなかった。

 検察側は論告で「遅くとも引退後の08年から覚醒剤を使用し、覚醒剤使用が生活の一部になっている」と指摘。再犯の可能性が高いとして懲役2年6月を求刑した。【清水優】