熱パにはさせない! ソフトバンク武田翔太投手(23)が、今季初完封でリーグトップに並ぶ10勝目を挙げた。テンポよく投げ込み、楽天打線を9回4安打に封じ込めた。2年連続2桁勝利となる白星で、2位日本ハムとの4・5ゲーム差もキープ。エースへの道を駆け上がる若き右腕が、リーグ3連覇のラストスパートのけん引役となる。

 武田が投げた最後の1球はフォークだった。楽天ペゲーロの外角にストンと落とし空振り三振。昨年6月4日のDeNA戦以来、通算3度目の完封で2年連続の10勝目を飾った。131球。「最後まで投げられてよかった。今日は直球がよかったので押せていけた」と喜んだ。

 自在に扱える大きなカーブが生命線だが、手先の器用さを生かした多種多様な変化球がスパイスとして効いている。フォークは2年目に投げていたものを最近また投げ始めたものだ。

 この日は、後半からフォークを使い始めた。工藤監督も「前半使わなかった球を後半使うと目先を変えられ、こういう投球ができる。技術を駆使するのも大事な要素」と配球をほめた。

 自身初の2桁となる13勝を挙げた昨年はチェンジアップを進化させた。オリックス金子にヒントをもらい、わしづかみから中指と薬指で真っすぐを投げるように変えた。低めに操れるようになったが、今年はほぼ投げていない。

 ルーキー時代の12年、7月にデビューし8勝1敗と大活躍した。その年のある休日、武田は西戸崎室内練習場で1人ネットに向かって変化球の練習を繰り返していた。「2年後、3年後のために引き出しを多く持っておかないといけない」。当時19歳の右腕は、すでに数年先を見据えていた。

 2年目、3年目は右肩を痛めるなど、体力面がついてこなかったが、夜中もランニングする努力が実り、2年連続2桁勝利を挙げるまでに成長した。10勝にも「うれしいですが、1年間投げきってから」とローテーションの柱としての自覚からか笑顔は少ない。

 日本ハムが猛追してきているが、10勝の和田と武田が引っ張る。同世代の千賀、東浜、岩崎も台頭。佐藤投手コーチは「武田も追い抜かれちゃうかもしれないよ」と言うほどハイレベルな先発陣になっている。今季最多の貯金31を数えるチームを武田が優勝まで導いていく。【石橋隆雄】