主砲の特大アーチで頂上決戦への扉を開いた。日本ハム中田翔内野手(27)が4点を追う2回に反撃ののろしを上げる2号ソロ。逆転劇の口火を切るなど3安打1打点1四球と大爆発した。大谷の165キロ連発に度肝を抜かれた4番だが、CS通算7本目のアーチを放ちMVPに選ばれた。最高の形で、22日から故郷・広島で開幕する日本シリーズへ乗り込む。

 最終9回の守備。一塁を守る中田の表情は緩んでいた。「笑うことしか出来なかったね。次元が違う」。マウンドには指名打者でスタメン出場していた大谷がいた。日本最速を更新する165キロを、間近で3球も目撃した。圧巻の投球に主砲も見とれていた。試合後、CSのMVPに選出。お立ち台に上がっても、まだ興奮していた。

 中田 すごいね、165キロ。なんか、こう、あそこまで打って投げてされたら、こっちが練習しているのがバカバカしくなる。

 突き抜ける才能に嫉妬したが、頼もしい後輩に最高の舞台を用意したのは、やはり頼もしい4番だった。

 4点を追っていた2回。一振りで不穏な空気を一掃した。2ボールからの3球目。ソフトバンク摂津のシンカーを左翼席中段へ運んだ。笑顔はない。淡々とダイヤモンドを1周した。「たかだか1点返しただけ。素直に喜べなかった」。鬼気迫る、闘争本能全開の姿でチームを鼓舞。「塁に出ることだけ考えていた」と、3安打1四球と全打席出塁で3得点。劣勢からの逆転劇の中心となった。

 短期決戦での強さを、あらためて示した。今CSでは5戦で2本塁打5打点。結果で、姿勢で、チームを引っぱった。栗山監督も「勝った試合、負けた試合あったけど4番の存在感。大事なところで、中田翔で、今日も決めてくれた」と主砲の仕事ぶりをたたえた。

 故郷で、自身4年ぶり3度目の大舞台に立つ。日本シリーズの相手は広島。少年時代は広島市民球場まで応援に駆けつけた元祖「カープ男子」だ。「広島カープもずっと見てきた。家族、親戚もいる。1番になっているところを見せたい」。4年前は届かなかった日本一に向けて、超満員のファンへ呼びかけた。「広島も、みんなで1つになって、ぶっつぶしましょう」。待望の大舞台で、4番がもう一暴れする。【木下大輔】

 ▼中田が2回にソロ本塁打を放つなど、今シリーズ通算でチーム最多タイの2本塁打、5打点でMVPを獲得。プレーオフ、CSでの本塁打は第1戦以来通算7本目。ウッズ(中日)和田(中日)の8本に次ぎ、森野(中日)中村(西武)と並ぶ3位タイに浮上した。通算打点は17。パ・リーグでは松中(ソフトバンク)の18に次ぎ、スレッジ(日本ハム)里崎(ロッテ)と並ぶ2位タイとなった。