標的にロックオンした。日本ハム岡が、トップスピードに乗った。9回1死。広島の代打小窪の大飛球が、舞った。つぶらな瞳で白球を捉えると、まっしぐらに駆ける。「無心でした。ギリギリでしたけれど、勝負しにいった」。チーム屈指の快足。超人的な身体能力を信じた。右翼ポール際でジャンプした。一瞬で恐怖心を排除し、フェンスに体を預けた。グラブへと、スーパーな1つのアウトを収めると、転がり込んだ。大歓声を浴びながら、絶叫して右拳を振り下ろした。

 執念を切らさず、大仕事をした。今シリーズ、初の1番に抜てきされた。1回に中前打を放ったが、2回2死満塁で二ゴロ。先制機を逃して投手戦になると、4回に痛恨の1プレー。2死一塁からエルドレッドの高く上がった飛球の対処を、迷った。追うのをやめ、捕球を任せた右翼の近藤が落球。先制点を献上する痛恨の適時失策だった。記録は近藤に適用も、岡は猛省した。「僕が(追うのを)やめてしまった。最後はぶつかってでも捕らないと」。自責の念でいっぱいも、最後に晴らした。

 度胸と覚悟で成就させたスーパープレーが、接戦勝利の呼び水になった。栗山監督も喜んだ。「人間離れしていたね。人間じゃなかったのかな、と思った。どうやって捕ったのかも分からない」。2戦連続で陽岱鋼の代役で、スタメンの中堅を務めて躍動した。ラッキーボーイの予感漂う。「ここから。チャンスで打てないと意味がない」。タイの振り出しに戻した一戦を、最高潮の盛り上がりで仕上げた。スピードスターが、逆襲への足音を大きくした。【高山通史】