生涯楽天を心に決めて地元仙台へ戻ってきた。西武から海外フリーエージェント(FA)権を行使した岸孝之投手(31)が18日、楽天と契約合意。コボスタ宮城隣接の会場で会見に臨んだ。マイクの前に座ると、大学卒業までを過ごした故郷への思いがあふれ出た。

 岸 地元に恩返しがしたかったんです。震災の後に何かしたいと思っても、何もできずにここまで来てしまいました。これから、僕が投げて勝つことで、少しでも皆さんを喜ばせることができればと思います。

 心の声に従った。「一度きりの野球人生。決めるなら今かなと」。故郷への思いが強まったのは、右足内転筋を痛め2軍調整となった今年4月のこと。開幕直後に離脱した悔しさ、情けなさ。複雑な感情の中、1つの考えが頭をよぎった。「いつ大ケガをして、投げられなくなるか分からない」。同時に、故郷への思いが浮かんできた。リハビリ中の西武第2球場で若手を見つめ、ぽつりと言った。「地元で投げるってすごくないですか?」。シーズン後にFAを決意して以降、思いは増すばかりだった。

 やるべきことは1つに絞られた。「日本一。それをしないと地元に帰ってきた意味がない」と自己最多の15勝を目標に掲げ、覚悟を示した。提示された背番号11も承諾。「塩見には申し訳なかったんですが…」と恐縮しながらも、球団の期待を逃げずに受け止めた。来季年俸2億2500万円(推定)から始まる4年契約は、出来高次第で最大16億円に達する。野球人生の最後まで楽天かと問われ「そのつもりです」と即答した。故郷への感謝を、投球に込める。【松本岳志】