プロ野球選手としての仕事を果たすため、ファンサービス面での準備にも着手した。ソフトバンクからドラフト2位指名された江陵・古谷優人投手(17)の入団祝賀会が11日、帯広市内で開催された。先月の福岡市内で行われた新入団選手発表でドラフト1位指名の創価大・田中正義投手(22)から「スマイル指導」を受けた。今後増える写真撮影の機会に指導の成果を発揮し、キラースマイルで鷹党を喜ばせる。

 自覚が古谷の表情にあふれていた。プロ入りへの準備の1つはしっかり進んでいた。写真撮影の時だった。白い歯をしっかり見せて、にっこり笑った。以前まで、カメラマンに笑顔を要求されてもうまく表情をつくれないことが多かった。「今はちゃんと笑えます」。今後、ファンからのリクエストや取材での写真撮影の機会が増えるのは必至。すでにプロ意識が芽生えている。

 きっかけはドラフト1位右腕の存在だった。「正義さんに『スマイル指導』をしてもらった」と明かす。ソフトバンクの一員としてのスタートをきった新入団選手発表の日。無数のフラッシュを浴びる中、田中に「笑えてない」と突っ込まれた。周りを見渡すと、他の選手は笑顔で写真に納まっていた。隣にいた工藤公康監督のオーラに対する緊張と、何枚も続く撮影に疲れ、引きつったせいでもあった。そんな中で「『歯を見せて、口角を上げろ』と言われた」と、アドバイスを送られた。指導されたとおり意識してみると、うまく笑えた。北海道に戻ってからも写真を懇願される機会があっても「一発なので」と、100%のスマイルで応じている。

 もちろん、技術面でも準備に抜かりはない。吹雪の日以外は、氷点下の極寒の中、1日最低3キロのランニングと20球以上のキャッチボールを欠かさず続ける。グラウンドの雪かきも後輩と一緒に行い「全身が鍛えられる」とハンディキャップの雪を利用している。「向こう(雪のない地域)の人たちよりも練習をやっている」と自信を持つ。

 来年1月8日には入寮し、同10日からは新人合同自主トレがスタートする。この日、古谷のプロ入りのお祝いに駆けつけた109人の出席者に誓った。「プロで活躍してからが本当に恩返し」。プロの世界での好投で、マウンドで自然とわいてくる笑顔が、一番ファンを喜ばせる。【保坂果那】