晴れ渡る宜野座のグラウンドに、ひときわ鋭い視線を送る人がいる。阪神が開幕カードで対戦する広島の玉山健太スコアラーだ。毎日、朝のウオーミングアップから目を光らせる。クールの最終日ごとに、投手、野手に分けたリポートをまとめて、球団に提出する。

 いまは、ひたすら新戦力がテーマだ。キャンベル、大山、小野…。かつての投手目線から特徴や弱点などを書き込むのだろう。

 力量を分かっている主力について書くことは、この時期、ほとんどない。それでも、マークは外さず、オープン戦で状態を見極めていく。

 玉山には、気になる人がいる。開幕投手の大本命、ランディ・メッセンジャーである。「毎年のように仕上がってきている。ランニングを見ても、しっかり走れている」と警戒する。そして「あれだけ絞ってどうなるのかを見たい」と続ける。今年のメッセンジャーは違う。オフは約5キロ減の109キロで、見るからにスリムになった。痩せて球質が軽くなり、失敗した人もいるが、本人は首を振る。

 「とにかく無駄な脂肪をそぎ落としたんだ。頭を使って、賢い食生活をしていけば、今後も問題ない。これも監督のためだからね」

 昨年10月、米国へ帰国直前に金本監督へあいさつ。「オフの間、しっかり体を作ってこい」と言われたという。現役をともにして野球観を分かち合う。シェイプアップは自覚の表れだ。来日後、7年間の歩みは、もはや助っ人ではない。

 昨年3月中旬、鳴尾浜でルーキー望月の投球を見て声を掛けた。「これでドラフト4位なんてウソだろ!! 1軍に出てこれるよ」。さりげない一声で後押しした。悩む若手にも、手を差し伸べる。同じ長身右腕のトラヴィスには「俺たちはこうやって投げるんだ」と言いながら、身ぶり手ぶりで動きを示したこともあった。若い後輩を温かく見守る、兄貴分なのだ。

 こんな話もある。読谷村の宿舎の食事会場には、早朝6時半頃、姿を見せるという。福留や鳥谷らと、真っ先に朝食をとるのが日課だ。順調にブルペンで投げているし、体調管理もバッチリ。まるで死角は見当たらない。大きな記事になっていなかったが、便りがないのが良い便り。WBC日本代表の藤浪を最長で3月下旬まで欠く可能性があり、3・31開幕に一直線な大男が頼もしい。(敬称略)