ボテボテでも全力だった。5-3の6回2死二、三塁。ロッテ井口はオリックス松葉のスライダーを打ち損じたが、三塁小谷野の送球より早く一塁を駆け抜けた。「内容は悪かったけどね。42歳、一生懸命走りました」と胸を張った。今季初安打が貴重な適時内野安打。チームの連敗を3で止めるのに貢献した。

 開幕10試合目で初めてスタメン起用された。それも4番。調子の上がらないパラデスの代役は、球界最年長の井口しかいなかった。だが「いつもどおりの感じ」と気負わなかった。6回は犠打やセーフティーを絡め、みんなでものにした。それを継投で守り抜いた。「チームでなんとか、と。勝ちパターンで行けた」と全員での勝利を喜んだ。

 開幕前日の先月30日、うれしいニュースが届いた。東日本大震災で被災した福島・須賀川市役所の新庁舎落成式。「できたそうですね」と笑顔だった。再建資金の一助にと、自らの野球道具を供出。ファンに購入してもらって寄付した。同じことを熊本地震で崩れた宇土市役所でも行った。「自分で寄付するのは簡単。ファンに知ってもらいたいから」。昨年末に宇土を訪れ、復興絵馬に「みんなで前進しよう」と書いた。みんなで前へ-。野球にも通じる信念だった。【古川真弥】