新しい風で連敗を止めた。前日に昇格したばかりのロッテ猪本健太郎内野手(26)は燃えていた。「古巣が相手。打つことが両球団への恩返しになる」。昨季限りでソフトバンクを戦力外。昨秋の入団テストでつかんだ新天地で、初めてスタメン出場した。2-0の4回先頭、摂津の内角139キロを引っ張って左翼線二塁打を放った。三塁まで進み、荻野のセーフティースクイズで生還。自身プロ2本目となる3年ぶりの安打から貴重な追加点のホームを踏んだ九州男児は「古巣相手は100倍、燃えます。泣きそうだった。泣かんかったけど」と豪快に笑った。

 前日は守護神・益田が打たれた。ショックが残るサヨナラ負けに、伊東監督は決断した。「猪本を使う」。2軍でも打率2割に達していなかった。期待したのは快活さあふれる性格にだった。「新しい風を入れて欲しい。全体的にベンチが暗い。うちにいないキャラ。雰囲気を変えてくれれば」。

 試合前の円陣では、2日続けて主将の鈴木から声出し係に指名された。「ここから、うなぎ上りで行きましょう!」。こどもの日の前日は「こいのぼりの横に勝利の旗を立てましょう!」。負けたので、とっさに「こい」を「うなぎ」に変える機転を利かした。

 5回に4号ソロを放った鈴木は「健太郎の存在は大きかった。クビになって気持ちが入っていた。つられて声が出た。こうやっていたんだと思い出した」。抜てきした伊東監督も「よく頑張った」とねぎらった。ソフトバンク相手に8戦目でやっと勝ち、連敗は5で止まった。ただ、最下位は変わらない。「1つ勝っただけでは喜べない。もう明日のことを考えてます」。伊東監督も燃えている。【古川真弥】

 ◆猪本健太郎(いのもと・けんたろう)1990年(平2)12月23日、熊本県生まれ。鎮西高から08年育成ドラフト4位でソフトバンクに入団。10年フレッシュ球宴で優秀選手賞。13年オフに支配下登録され、14年7月29日楽天戦でプロ初出場。昨オフに戦力外となり、テスト生を経てロッテに入団。今季年俸は500万円(推定)。182センチ、95キロ。右投げ右打ち。