２度目の「奇跡」を信じ、終盤にサプライズ起用があった。８回表に阪神原口が代打で登場し、右前打を放った。その裏の守備では防具を付けて、ベンチを飛び出した。スタンドからどよめきが起こる。今季初めて捕手として守備に就いた。「特別な感情はなかったです。驚いたくらい」。春季キャンプでは正捕手を狙ったが、打力を生かすために一塁に本格コンバート。予期せぬタイミングでマスクをかぶった。

　最後まで勝利をあきらめないベンチの姿勢だった。原口をそのまま下げれば、打線は手薄になる。金本監督は言った。「こういうこともあるよ、という備えとして。そこ（９回）を計算に入れてのことだから」。８回裏は岩崎とバッテリーを組んで、３者凡退に抑えた。「いいピッチングをしてくれたので、何かをする場面もなく、僕は関係なかったですね」と控えめに振り返ったが、捕手原口は選手起用の幅を広げた。

　開幕から梅野と岡崎の捕手２人制を採用しているが、これは原口を第３の捕手として計算しているからこそ。矢野作戦兼バッテリーコーチは「これから先もいろんな準備がある。いい機会と言っては何だけど…」と話す。最終回には中谷のソロ本塁打が飛び出すなど、追い上げムードは消えなかった。あと打者２人が出塁すれば、打席が回っていた。選手だけではなく、首脳陣も最後までファイティングポーズを崩さない。原口の捕手起用は、今季２度目の大逆転という夢を見させた。【田口真一郎】