虎の進撃が止まらない。首位阪神が4番福留孝介外野手(40)のV打で、DeNAに連勝し、14年8月21日以来997日ぶりとなる2桁貯金に到達した。福留は同点の9回無死一、二塁で勝ち越しの右前適時打。チーム34試合目での貯金10到達は、過去5度のリーグ優勝シーズンと比較しても、03年の33試合目に次ぐスピード到達。頼もしい主砲が、V予感漂う白星を呼び込んだ。

 これぞ4番だ。強烈な打球が一、二塁間を破った。同点の9回無死一、二塁。福留はカウント1-1から真ん中に入った変化球を狙い通りに仕留めた。「飛んでくれたところが良かった」。40歳のヒーローは謙虚にそう話したが、思惑通りの引っ張り。プロ19年目の野球職人が一撃で勝利を手繰り寄せた。

 「幸運のバット」がまた幸運を運んだ。初回に2死三塁の先制機で見逃し三振。その後はいい当たりを連発したが中飛、右飛と凡打が続いた。「気分転換。全部正面にいっていたから」。9回の次打者席に携えたのはいつもの白色バットではなく、茶色バット。9日巨人戦でエース菅野からアーチを描いた相棒でまたも結果を残した。

 特別な日だった。母の日。鹿児島の実家の玄関には白いコチョウランが飾られていた。「嫁がいろいろ考えてやってくれてる」。福留はそう言って笑うが、母の記念日は決まって花を贈る。母郁代さんは会社勤めをしながら男3兄弟を育て上げてくれた。忙しい合間を縫って中学時代の福留に、練習の行き帰り用として2食分の弁当を持たせてくれた。野球をする息子たちのためにスコアブックの書き方を覚えたのも母だった。報道陣から囲まれた福留は「いい母の日になって、喜んでくれたらいいですけど」。遠く離れていても感謝の気持ちが消えることはない。

 チームは日曜日に6連勝と「サンデータイガース神話」も継続し、貯金はついに「10」に到達した。4番の働きを「さすが」と称賛した金本監督は「今は順位どうこうより、貯金を増やしていく。自分たちの勝ち方を確立していくのが目標。貯金はどんどん増やしたい」と、えびす顔。球団最速の2桁貯金到達は76年の14試合目だが、34試合目での達成は過去5度のリーグVシーズンと比較しても、03年の33試合目に次ぐスピード到達。ヒーローインタビューでマイクを向けられた福留は「すごく明るくていい雰囲気でやっている。これを続けていきたい」。この男がいれば簡単に転ぶことはない【桝井聡】