「直感」と菊池は言うが、観察のたまものだ。菊池は抜群に目が良い。捕手のサイン、構えるコース、打者のしぐさ。それだけではない。「たまにね」と控えめだが、投手、打者のユニホームのシワや、筋肉のスジまで気がつくこともある。データや傾向はもちろんだが、二塁から見る景色のほんの少しの違いが「予感」や「直感」につながる。

 打では「冷静さ」が光った。8回2死一、二塁。1番田中が敬遠されて打席に向かった。昨季最多安打の男は「打ってなかったから。でも逆にリセット出来た。詰まってでも向こう(右翼)に打とうと思ったのがよかった」。引っ張った凡打を反省。詰まりながらもフォークを右前に落とした。一塁上で軽く手をたたき、今度は少しだけ喜んだ。

 4回には先制点につながる犠打を決め通算199犠打。プロ野球39人目の200犠打に王手をかけた。守って、打って、送って。チームを6連勝に導いた。昨季は交流戦で勢いをつけてVロードを走った。今季は着実に、淡々と勝つ。欠場する試合ではベンチには座らず、最前列で声をからす菊池が、先頭に立つ。【池本泰尚】