華麗なる転身だ。ロッテから戦力外通告を受けた田中英祐投手(25)が現役を引退し、総合商社大手の三井物産への就職が内定したことが21日、分かった。現役3年間で未勝利に終わり、球団からはフロント入りを打診されていた。京大初のプロ野球選手として注目されてきた右腕が第2の人生に選んだのは、世界を股に掛ける商社マンだった。

 

 プロ野球選手から商社マンへ、超レアな“転職”が実現した。田中は「球団に残り野球界に貢献することも考えましたが、新しい世界で勝負したいと思いました」と晴れやかな顔で話した。来年4月1日からは、同期160人とともに三井物産の正社員として働く。

 再び縁が巡ってきた。京大工学部4年生だった14年春、同社の内定をもらったが「安定よりも挑戦したい」とプロ志望届を提出。ドラフトでロッテの2位指名を受け、京大初のプロ野球選手が誕生した。だが、3年間で1軍登板2試合のみ。今年10月に戦力外通告を受けた。ほどなく、3年前の採用担当者が連絡をくれた。「また、受けてみないか」。現役続行と悩んだが、最後は「内定を蹴ったのに、また受けさせてくれるなんて。こういう会社で働いてみたい」と決断した。

 他の大学生と同じく、複数回の面接をへて内定を得た。採用担当の古川人材開発室長は「プロ野球で修羅場を踏んだ経験は、ビジネスでも生きる」と期待する。「挑戦と創造」を掲げる同社にとって、京大からプロ野球に飛び込んだ生きざまそのものが評価に値した。テニスや柔道などアマチュアのトップ選手が入社した例はあったが、元プロ選手の入社は初めてだという。

 イップスにも陥った。サイドスローにも替えた。もがき、苦しんだプロ野球人生だったが、田中は「乗り越えられたかは分かりませんが、1日も手は抜きませんでした。人として大きくなった3年間でした」と胸を張った。商社マンに英語は必須。来年1月には、私費で米国への語学留学を考えている。さらば、プロ野球。新たな挑戦が始まった。【古川真弥】

 ◆田中英祐(たなか・えいすけ)1992年(平4)4月2日生まれ、兵庫・高砂市出身。白陵から京大工学部。卒論テーマは「SFAにおける溶媒和構造の逆計算理論」。大学通算65試合8勝31敗、防御率2・25。14年ドラフト2位でロッテ入団。プロ通算3年間で2試合0勝1敗、防御率13・50。180センチ、75キロ。右投げ右打ち。

 ◆三井物産株式会社 日本を代表する総合商社。明治初頭に実業家の益田孝が設立した会社が源流。戦後の財閥解体をへて、現在の三井物産は47年に設立された。資本金約3415億円(17年9月30日現在)。従業員5971人(17年3月31日現在)。世界66カ国・地域に事業所を持つ(17年11月1日現在)。