<オープン戦:阪神7-3広島>◇5日◇京セラドーム

 どうじゃ!

 広島大竹寛投手(24)が「因縁の対決」を制した。阪神との今季初のオープン戦(京セラ)で、昨年まで広島の主砲を務めた新井と対戦。初回に空振り三振を奪うなど、2打席無安打に封じ込んだ。注目のマッチアップの第1ラウンドだったが、初の開幕投手にバク進中の大竹にとって、そんな話題は些末(さまつ)なこと。いつもどおり冷静に、課題について反省した。

 「3番、ファースト、新井」のアナウンス。聞いたことのない応援歌が右翼スタンドから聞こえてくる。マウンドの大竹もいくらか違和感を感じていたはずだ。だがそんなものに、一国一城のエースがいちいち気にするわけにいかない。

 「対戦する前からあまりそういう意識はなかったし、実際に対戦してみても他の打者と同じように投げられたと思います」。入団以来6年間もお世話になった先輩でも、マウンドと打席の間、18・44メートルで対峙(たいじ)すればあくまでただの敵の打者にすぎない。オープン戦だからといって、楽しむことなどない。大竹の自覚がにじんだ。

 思い切り、倒しにかかった。初回にいきなり迎えたピンチ。無死一、三塁で新井にこん身の直球を投げ込んだ。フルカウントからの6球目は143キロ。大きなふところに鋭く切り込むシュートだった。新井のバットは豪快に空を切った。2打席目も三ゴロ。これもシュートだった。

 大竹は「対新井」に限らず、広い意味で納得していた。「シュートはイメージどおりというか、狙ったところに投げられました。新井さんというより右打者に対しての内角のシュート。これから精度を上げていかないと」。直球に近い速度で胸元をえぐるシュートは、昨年まで黒田が武器にしていたものだ。これを完全に習得できれば、内野ゴロを狙ってとれるし、球数も抑えることができる。大竹のテーマの1つだ。

 初回、新井を封じたあとに金本に2ランを浴びた。真ん中に入った直球を左翼席にぶち込まれた。148キロも計測するなどシーズン本番を想起させる、熱のこもった投球だった。「自分では普通のつもりでしたが、知らず知らずのうちに力が入ったのかも。甘くいっちゃいましたね」。

 その後は尻上がり。島野育夫氏の追悼試合で勝ちに来ていた阪神のベストオーダーに対し、3回2失点でまとめた。「今日はストライク先行と1つ1つの制球をていねいにすることを心がけたが、だめでしたね。毎回、先頭打者を出してしまったし」。結果は完ぺきではなかったが、1試合ごとにテーマを設定し、その課題と向き合うことが最大の目標。迷いはない。

 今は「開幕」という大きな責任をまっとうすることに集中する。「こういう雰囲気はやってみないと分からない。緊張感とか、どこに投げたら打たれるとか。早く戦闘モードに入っていきたいですね」。本番に向け大きな1日だった。新エースの目つきが鋭くなってきた。【柏原誠】