<阪神4-3巨人>◇27日◇甲子園

 猛虎は負けない。阪神が甲子園での巨人戦で2-3の9回、足と目で巨人の抑えクルーンを崩し逆転サヨナラ勝ちした。土壇場2死一、三塁から絶好調赤星憲広外野手(32)が内野安打で同点に追いつくと、2死満塁から新井貴浩内野手(31)が、粘って粘って押し出しの四球、今季初の劇勝だ。これで開幕から9カード連続で負け越しなし。連敗もなし。4月中での貯金を球団史上最多の12に伸ばした。

 剛速球投手クルーンの前に、新井はバットを短く持って挑んだ。カウント1-3から4球ファウルで粘る。9球目。外角に外れた156キロを執念で見送り、勝負を決めた。

 「160キロ近くの真っすぐはなかなか見極めは難しい。あの状況ではつなぐしかなかったですから。でも、あれ(最後の球)はボールだと思った」。4番金本がネクストサークルでヘルメットを脱いで待っていたことも、試合後、クルーンが審判に抗議していたことにもまったく気づかなかった。それだけ打席に集中していた。駆け寄ってくるナインの手荒い祝福に、ほおが紅潮した。ヘルメットを脱がされ、所構わずたたかれる。移籍して初めて味わう“洗礼”だった。

 つないでつないで崩した。9回鳥谷が左前打で出塁。矢野は送りバントの構えをしていたところへ156キロの速球が顔面付近を通過。反射的にのけぞって倒れて事なきを得たが「死ぬかと思った」。ナインの心が燃え上がった。矢野は四球。関本が送りバントを決める。代打桧山は一ゴロに倒れたが、2死一、三塁でもう1人のヒーロー赤星が残っていた。

 追い込まれてからが真骨頂だった。高くバウンドしたゴロは三遊間へ。必死に走る。最後は自ら両腕を広げてセーフのポーズ。塁審も同じジェスチャー。

 「今までで一番速かったと思います。一塁に走るのが!

 バットをふた握り、短く持った。低めの球はよく見えていたし、速くても何とか対応できると思った」。同点。もう流れは阪神のものだった。

 直前の9回表には2死満塁で坂本の飛球をスライディングキャッチしていた。「ダイブ、ヤバいんですけど、ダイブしてでも行くつもりでした。9回表がポイントでしたね」と振り返る。昨季は頚椎(けいつい)椎間板ヘルニアに苦しみ精彩を欠いた。オフは首周辺の強化に明け暮れ、今季は元気に猛虎を引っ張る。この日は2安打2四球など5打席すべて出塁。出塁率4割6分8厘で、リーグトップに躍り出た。

 今季初のサヨナラ勝ちに、岡田監督も「クルーンからきれいなヒットは打たれへんからな。今週は厳しいゲームが続いていたけど、最後に勝ち越したのが大きかった」。中日、巨人との6連戦を3勝2敗1分けで乗り越え、開幕から9カード連続で負け越しなし。02年の貯金9を上回り、4月中での貯金を球団史上最多の12に伸ばした。