<日本ハム7-12西武>◇1日◇札幌ドーム

 役者がそろっても白星には結びつかなかった。勝利に沸く西武ナインを尻目に、左手甲の骨折から復帰した日本ハム森本稀哲外野手(27)は、1カ月ぶりに立った札幌ドームのグラウンドから足早に引き揚げた。「もちろん勝つためにやっているので、勝ちに貢献したかったけど…。でも元気に野球できたことはよかった」。試合後の胸の内には、充実感と悔しさが同居していた。

 あたたかな空気に包まれた。試合前のシートノック、慣れ親しんだ中堅の守備位置へと向かう際、スタンドから降り注ぐ“お帰り”の拍手がやまなかった。「みんなの前に帰ってこれたことがうれしかった」。2打席目に四球を選び、今季初めての1イニング6得点の一翼を担うと、4回には右翼線二塁打で復帰後初安打も記録。同じ個所を骨折しながら先に復帰を果たしていた高橋も札幌凱旋(がいせん)アーチをかけ、白星へのおぜん立ては整っていたが、投手陣は札幌ドームで2年ぶりとなる2ケタ失点。シナリオ通りにはいかなかった。

 苦しい1カ月だった。シーズン中の離脱は初めて。森本はチームの情報をシャットアウトする道を選んだ。焦る気持ちを押し殺し、リハビリに集中するためテレビ中継も見なかった。鎌ケ谷ではトレーナーと屋内練習場にこもり、できる範囲で体をいじめた。「いろいろなことを考えたし、いろいろなことが見えた。多くの人に支えられていることをあらためて痛感した。(復帰したことで)恩返しができたかな」。振り返る表情には安堵(あんど)がにじみ出ていた。

 首位攻防第1ラウンドを落とし、残り2戦を連勝しても首位浮上はなくなった。だが、森本は前を向いた。「楽しかった。自分はやっぱり野球人なんだと思った。こういう大事な試合に負けたときこそ、自分の力を発揮しなければいけない」。核弾頭として暴れ回る準備はできている。まだ、試運転が終わったにすぎない。【本間翼】