<日本シリーズ:西武4-6巨人>◇第3戦◇4日◇西武ドーム

 連敗にも明るい兆しが見えた。「おかわり君」こと西武中村剛也内野手(25)が6回、巨人西村健から一時は1点差に詰め寄る3ラン。徹底した内角攻めに苦しんだが、日本シリーズ11打席目にして待望の初安打が、次につながる1発となった。シリーズ3連勝中だった先発石井一久投手(35)は6回5失点KOで、16年ぶりに黒星。7、9回と微妙な判定2つに泣かされる不運も痛かった…。

 「入れっ、入れえ!」。西武ベンチの祈りにも似た叫びに後押しされた打球は、左翼席前列に飛び込んだ。11打席目。苦しみ抜いた4番中村の日本シリーズ初安打は、本塁打王らしい滞空時間の長い1発だった。「どうでもいいという気持ちでいきました。1本出て本当に良かった」。ヤケクソ気味に開き直り、主砲にようやく笑顔が戻った。

 0-5の6回、片岡から3連打で1点を返した。ともに苦しんでいた同期入団の2番栗山にシリーズ初安打が出たことで、中村も肩の力が抜けた。「絶対にインコースがくると思った。逆球だったけどね」。2番手西村健の高めに抜けた146キロシュートをフルスイング。「命までとられるわけじゃない。失投をしばいてこい!」。打席前に受けた大久保打撃コーチのゲキに一発回答でこたえた。

 初めての大舞台。2試合無安打に「まだ8打席打てていないだけなのに…」と弱音を漏らした。レギュラーシーズンでは5試合連続無安打もあったが、注目度も重圧も比ではなかった。自分で乗り越えるしかない。試合前の練習でサク越えを放った後、「打ちましたあ」と言ってバットを放り投げた。いいイメージだけを膨らませて打席に入り、結果を出した。

 巨人に連敗したが、中村の3ランで一時は1点差に詰め寄った。渡辺監督は「いいところで一本が出た。まだ1つ負けられるし、切り替えればいいだけ」とまだまだ余裕の口ぶり。「追い込まれたわけじゃない。明日につなげます」と中村。おかわり復活弾が、4戦目以降に希望を照らす光となった。【柴田猛夫】