<阪神4-1西武>◇27日◇甲子園

 炎の逆転劇は背番号7から始まった。1点を追う7回裏。先頭打者の今岡誠内野手(34)が左中間へ痛烈な打球を放って二塁打をマークした。二塁へは果敢にヘッドスライディング。極度の不調が続いていた男が迫力満点のプレーで、沈黙していた打線に火をつけ、この回4得点で逆転に成功した。投げては41歳の下柳が3連勝で今季4勝目。交流戦の順位も9位から5位に浮上し、今度こそトラが上昇気流に乗ります!

 今岡の体が宙に浮いた。胸を地面に打ちつけながら、両手を二塁ベースに伸ばした。「足が速かったら格好良かったんやけどね」。不格好でも構わない。瀬戸際に追い込まれた男のヘッドスライディングが、ナインの心に火をつけた。

 西武石井一にわずか2安打。完全に封じ込められ、0-1で迎えた7回だった。先頭で左中間にライナーを放ち、一気に二塁を陥れた。この激走から、この回一挙4得点。真弓監督は「やっぱり今岡の二塁打。それまで塁に出られていなかったのが、先頭で二塁打ですから」と褒めたたえた。

 長年、虎を支えてきた男も34歳。今季は代打業に汗を流しながら、悩み苦しんでいた。「今はバッティングが8割。打って打って打って、ということ」。自分の役割を分かっていながら結果が出ない。そんな時、1本のヒットが自信を取り戻させてくれた。

 4月28日横浜戦(倉敷)。6回に代打登場し、バットを粉々に折りながら左前打を放った。「折れた時は手がしびれる時としびれない時がある。極端に言えば、バットがボールに勝っているかどうか。勝っていたらしびれない。昨日はしびれなかった」。まだ、やれる-。1本のバットと引き換えにつかんだ手ごたえを1カ月後、ついに結果につなげた。

 「打撃練習の調子は良かったんだけど、代打でなかなか(結果が)出なかったから。何回か打席に立たせた方が良いか、ということで。(不振の理由は代打の)経験がないのもあったんじゃないかな」。

 代打としても活躍した真弓監督の配慮もあり、この日は今季2試合目の先発出場。一塁手としての先発は1年目の97年4月17日中日戦(甲子園)でプロ初スタメンを飾って以来、12年ぶりだった。12年前も「7番一塁」。当時と同じ場所、同じ打順から復活への道を歩き出した。まだ打率1割台。この日も2打席目まで無安打だった。「ヒットが出ていなかったから、自分的にも打ちたかった」。絶体絶命の状況で、値千金の今季4安打目を記録した。

 試合前、吉報が届いた。母校・東洋大硬式野球部が亜大を破り、5季連続のリーグ優勝を決めた。「すごいね、すごい!

 僕らの時は万年2位だったから」。後輩の姿に力をもらい、自身、そしてチームを救う1本を放った。

 [2009年5月28日12時16分

 紙面から]ソーシャルブックマーク