7年ぶり日本一に王手をかけた巨人は6日、札幌入りした。野手陣は休養日とし決戦に備えたが、小笠原道大内野手(36)はただ1人、札幌ドームで約2時間、ティー打撃などで最終調整した。06年オフに日本ハムからFA移籍した小笠原自身にとっても集大成の一戦となる。

 「カツン、カツン…」。閉ざされたブルペンの鉄扉ごしに、小笠原特有の柔らかいティー打撃の音が響いた。練習を終え姿を見せると、担いだバットの先にシルバーの重りがあった。左手一本で、脇をギュッと締めたまま行う打撃の土台づくり。「やれることをやっただけ」。最後の最後まで己の仕事に徹し抜いた。

 投手陣の一部が行った札幌ドームでの練習。疲労を考慮した野手陣は移動後の時間を休養に充てた。だが小笠原だけは普段通りだった。ランニング、ダッシュ、キャッチボールと入念に体を温め、ティー打撃でフィニッシュ。「飛行機、バスに長時間乗って、体がなまったから」と素っ気なかったが、約2時間のフルメニューで大一番に備えた。

 第3戦で2度の勝ち越し打を放ったが、第4戦では失策が失点に絡み、好機もつぶしていた。5戦を終え打率2割5分、1本塁打。まだ暴れ足りない。「食事まで時間があるし、また座って体が固まるから」と、じっとしていられなかった。「明日(7日)になったら気持ちも入る。一戦必勝です」と、王手をかけたインタビューで原監督がファンに誓った言葉を重ね引き揚げた。

 3年前、自らの意思で日本ハムを離れ巨人を選んだ。入団会見で明かした「口ではなく、プレーで引っ張っていけたら」という決意を忘れずにきた。だから「休日返上、とか色めき立ってもらっても…。そんな大げさじゃない」と言った。「私情は胸にしまって。終わったらゆっくり振り返りたい」。決断は正しかったと納得するためにも、自分のバットで雌雄を決する。【宮下敬至】

 [2009年11月7日9時15分

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