楽天のルーキーに“ダル”がいた!

 楽天が16日、仙台市内のホテルで新入団選手6人の入団発表を行った。ドラフト5位の土屋朋弘投手(24=シティライト岡山)はニックネームを聞かれると「(テレビゲームの)ストリートファイターのキャラクター『ダルシム』に似ているので、そう呼んでください」と宣言。キャラクター同様、腕が長く、球持ちの良い最速146キロ右腕が、日本ハムの「本家ダル」に挑む。

 ドラフト1位戸村が「トム」、同2位西田は「てっちゃん」と親しみやすいニックネームを披露する中、土屋が「ダルシムで」と発すると、会場に集まった220人のファンからどよめきが起きた。ダルシムって誰?

 何…。そんな雰囲気が流れても、土屋は動じず「色黒なところが似ています。覚えてください」と念を押した。“楽天のダル”が誕生した瞬間だった。

 ダルシムは、格闘ゲーム「ストリートファイター4」に登場するインドの修行僧。そのキャラクター同様、長い腕から放たれるキレの良い速球と変化球が、土屋の持ち味だ。その速球をシティライト岡山の同僚は、ダルシムの必殺技に掛けて「ヨガファイアボール」と呼ぶ。中尾明生スカウト(57)も「バランスが良くキレがいい。1年目から1軍を目指せ」とエールを送った。

 “本職”以外の部分で異彩を放ちながら晴れの舞台に立った土屋だが、野球では苦労人だ。箕島高(和歌山)時代は、エース経験もあったが3年夏には背番号も、もらえなかった。父昌弘さん(50)は「泣いてました。でも、あれがあって、ここにつながった」と当時を振り返った。

 名古屋商大では、元PL学園監督の中村順司監督(63)に、しごかれた。「体のバランスが悪い」と歩き方を直され、交換日記で野球道を深めていった。99年に中村監督が同大の監督に就任して以来、初のプロ投手。PL学園時代に輩出した元パイレーツ桑田氏のDNAも刻まれている。

 社会人では野球環境に恵まれなかった。午後2時30分まで中古車販売の仕事をこなす日々。正規のグラウンドはなく、隣接する駐車場で走り込むなど、自主練習を重ねプロをつかみ取った。「投げれば大丈夫と思われる投手になりたい」と土屋。「本家」に一歩でも近づくためにも、ダルシム同様、修行の心は惜しまない。【三須一紀】

 [2009年12月17日11時49分

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