<阪神6-7巨人>◇13日◇甲子園

 原巨人が首位を死守した。0・5ゲーム差で迎えた阪神との首位攻防第1ラウンド。延長12回だった。1死一、二塁からルーキー長野久義外野手(25)が勝ち越し13号3ランを放ち、4時間を超すゲームに決着をつけた。4連敗で敵地に乗り込み、プロ野球ワーストタイとなる12試合連続2ケタ被安打も、ルーキーの一振りが窮地を救った。負ければ首位陥落だったが、逆に1・5ゲームと差を広げた。14日の第2ラウンドで一気に引き離しにかかる。

 激しさを増した雨もお構いなし。ヒーローを出迎えようと、巨人ナインが総出でベンチ前に飛び出した。延長12回、長野が阪神西村から勝ち越し3ランを放った。カウント1-0で外角高めを強振。真っ黄色に染まった右翼ポール際にライナーで突き刺した。目をカッと見開いた原監督とグータッチ。でも、笑顔はなかった。「入るとは思わなかった」とポツリ。喜びに沸く仲間とは対照的だった。

 ヒーローインタビューは、意外にも「反省」から始まった。「僕のバントミスから流れが行ってしまった。すごく責任を感じています」。試合後、激しさを増した雨で体中ぐっしょりだった。負ければ首位陥落の危機を救う一打。でも、ぬれた顔をぬぐうことなく、ただただ反省した。

 2点リードの4回無死一塁、送りバントを失敗し捕邪飛。追加点の好機をつくれなかった。その裏、4点を失い逆転された。7回に同点に追い付き、なんとか延長戦に持ち込んだが「守備のミスもありました」。1点差に追い上げられた直後の4回無死一、二塁、ブラゼルの右翼線二塁打でクッションボールの処理にもたつき、走者を2人ともかえしてしまった。「チームに迷惑をかけた。取り返したい気持ちだった」と覚悟して最後の打席に向かった。

 謙虚に。それがプロの階段を上る原動力になっている。すべてが初体験の1年目。早くも13本塁打を記録しても「周りの皆さんのおかげです」と即答した。12日は、休日返上で首脳陣の指導を受けた。篠塚コーチらの声に耳を傾け、あえて緩いボールを打ち返しスイング軌道の確認に取り組んだ。

 一方で、新人離れした、ずぶとさも持つ。打率が2割3分台まで低迷した6月上旬、10日のオリックス戦でスタメンを外れた。その日の夜、脇谷は宿舎で長野を見かけたが、いつもと変わらぬ様子に驚いた。「全然、落ち込んでいなかった。食欲も同じ。普通の新人なら気にするのに。大したもんですよ」と証言する。駄目でも、次に取り返せばいい。逆境からはい上がるタフさが、土壇場の1発を呼んだのかもしれない。

 ミスもあった。値千金の1発もあった。原監督は「まだまだ課題はある。どういう結果が出ても糧とすることが大事です」と温かかった。長野は「守備とバント。しっかり練習します。今日は反省です」と繰り返した。打っておごらず。指揮官の希望通り、すべてを糧とする。【古川真弥】

 [2010年7月14日9時8分

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