<中日3-2広島>◇15日◇ナゴヤドーム

 悔しい敗戦にも収穫はあった。プロ2年目の広島中田廉投手(20)が「先発テスト」に合格した。2度目の先発となった中日戦で自己最長の5回4安打2失点。プロ初勝利こそお預けとなったが、野村監督は「また、チャンスをもらえるのかな」と評価した。チームは2試合連続延長サヨナラ負けで中日3連戦は3連敗。借金は今季最多23に膨れ上がる苦境に、期待の右腕が新風を吹き込んだ。

 見せ場は1回に訪れた。中田は1死二塁のピンチを背負い、強打者の和田と向き合う。だが、軌道を微調整したスライダーを外角低めに投じて中飛に料理。森野を捕邪飛に抑え、窮地を脱した。「前回と違って、四球を出さなかったのが良かったです。5回まで全力で、行けるところまで行ってやろうという気持ちで初回から飛ばした」。初先発の8日巨人戦は2回2失点で降板。4四球を与えていた。この日は制球もよく、一転して無四球の安定感を示した。

 わずか1週間で、中田は進化していた。ナゴヤドームのマウンドで立ち位置を変えた。これまではプレートの一塁寄りから投げていたが、この日は中央へ。制球に苦しんだ前回登板から修正、工夫を凝らした。「変化球がすべて外のボール球になってしまっていた。良かったですね」。変化球の軌道がストライクゾーンに収まるよう、大野ヘッド兼投手コーチの助言を生かした。

 2点リードの4回2死二塁で堂上直に浮いたカーブを痛打され、左翼席に同点2ランを浴びた。「あの1球は、やってはいけない」と反省。それでも、プロ2度目の先発は自己最長の5回2失点でまとめた。野村監督も「内角に飛び込んでいくこともできたし、ああいう投球をすれば、またチャンスをもらえるのかな。新しい力を生み出さないといけないし、経験を積ませるために投げさせている」と、先発ローテーション入りに太鼓判を押す。20日からの横浜3連戦(マツダ)での先発が濃厚になった。

 8日の登板後は、救援陣に混じって練習しており、この日の朝、サプライズの先発を告げられた。「準備はしてなかったけど、もう1回チャンスをもらって、やり返すつもりだった」。チームは今季最多の借金23に停滞する。ナインに必要なのは、20歳の若武者が見せる“ギラギラ感”だ。【酒井俊作】

 [2010年8月16日11時3分

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