<全国高校野球選手権:興南10-3聖光学院>◇18日◇準々決勝

 鉄壁を誇った「東北最後のとりで」が崩壊した。聖光学院(福島)が、センバツ王者の興南(沖縄)に完敗。初の4強入りを逃した。3回表にはドラフト候補・島袋洋奨(ようすけ)投手に5安打を浴びせ、3点を先制。だが3-3の4回裏、山口宏希二塁手(ともに3年)の落球をきっかけに3点を奪われ、その後も興南打線を抑えきれなかった。みちのく勢は甲子園から姿を消し、悲願の大旗取りは今夏も果たせなかった。

 王者が放つ威圧感に圧倒された。3点のリードがなくなった4回裏1死。島袋の打球が、二塁後方にふらふらっと上がった。後退する山口、前進する根本康一中堅手(3年)はともに「オーライ」の声を出す。互いに譲らず、落下点で交錯。山口のグラブから白球がこぼれ落ちた。2死一、三塁となり、エース歳内(さいうち)宏明(2年)が、2番慶田城(けだしろ)に痛烈な勝ち越し三塁打を浴びた。さらに悪い流れを引きずる。続く我如古(がねこ)の二ゴロを山口が取り損ねる。甲子園2試合無失策、福島大会1試合平均1失策。堅守のチームが1回2失策でリズムを崩し、一気に突き放された。

 先制を機にペースをつかんだはずだった。2回表、主砲・遠藤雅洋(2年)が島袋の直球をはじき返す。左翼線を破る二塁打を皮切りに5安打で3点を奪い、島袋を攻略したかに見えた。だが相手バッテリーは巧みだった。直球主体だった配球が3回以降変わった。変化球を続けたかと思えば、いきなり内角の速球。的を絞り切れず、3回以降は散発5安打で1点も奪えなかった。斎藤智也監督(47)は「今日勝ったら優勝旗をもらってもいいぐらいだと思っていた。残念のひと言」と脱帽だった。

 本気で全国制覇を狙った夏だった。昨秋の状況からは考えられない成長だった。新チームのスタートは村島大輔主将がリーダーシップを発揮した。凡ミスが出ると、練習を止めてでも厳しい言葉を浴びせた。大声を上げたこともある。意識の高さに周りがついて行けなかった。危機感を感じた斎藤監督は1月、三瓶央貴(ひろき)を主将に変えた。三瓶の姿に、選手たちは団結させる苦労を知った。控えの斉藤慧(いずれも3年)もベンチ外の選手をまとめた。5時間以上、涙を流しながら話し合ったこともあった。

 チームをまとめたいからこその厳しさ。全員が村島の思いを理解したのは3月下旬。斉藤は斎藤監督に「もう村島をキャプテンに戻して大丈夫だと思います」と伝え、村島主将の下、全国制覇への戦いが始まった。

 今春の東北大会で初優勝。県内公式戦51連勝。甲子園では強豪の広陵(広島)、履正社(大阪)にも勝った。それでも大旗には手が届かなかった。「後輩には日本一を実現してほしい」。村島は涙をぬぐい、聖光学院の夢を新チームに託した。【湯浅知彦】

 [2010年8月19日10時27分

 紙面から]ソーシャルブックマーク