来季はグラウンドで会いましょう-。阪神金本知憲外野手(42)が、恩師に惜別の言葉を送った。19日、星野仙一オーナー付シニアディレクター(63=SD)が阪神退団を表明。02年オフに広島からFA移籍した際、同氏の熱烈ラブコールが決め手となって阪神入りした金本は寂しさを募らせ、完全復活を目指す自身の“発奮材料”とする意気込みを見せた。

 選手と監督としての関係は、わずか1年しかない。だが、金本にとって星野氏は、野球人生で多くの感銘を受けた1人として存在している。無情のCS敗退からわずか2日後。甲子園クラブハウスを訪れて治療とトレーニングを行い、誰よりも早く来季へ向けスタートを切った。星野氏の退団について「あの人がいなかったら(自分は)阪神に来ていない。そういう意味では寂しい思いがある」と素直な胸の内を明かした。

 同じタテジマのユニホームに袖を通したのは、阪神が18年ぶりのリーグ制覇を果たした03年だった。その前年オフ。広島からFA宣言した金本を口説き落としたのが、当時、阪神監督を務めていた星野氏だった。「優勝するために必要な戦力なんや」。星野氏の直球勝負とも言える熱烈ラブコールに、金本は「優勝するために必要な戦力と言われ、その熱意にこたえようと思いました」と阪神入りを決断した理由を明かした。

 闘将と二人三脚で目指したペナント奪取。打線の中核でもある3番を任され、ここ一番での勝負強さを余すことなく発揮して打線をけん引した。日本シリーズではダイエー(現ソフトバンク)に敗れたが、4本塁打、3試合連続本塁打、1試合2本塁打と3つのシリーズタイ記録を達成。この日本シリーズ直後、星野氏は健康上の理由で監督を勇退。たった1年しかともに戦えなかったが、闘将との思い出は今でも心の中に強く残っている。

 「迷ったら前に出ろ」。FA交渉の際、星野氏から送られた言葉を今でも鮮明に覚えている。今季は右肩痛で不満の残る1年となったが、早くも始動したことから分かるように、完全復活を目指す来季への準備に着手した。万全の状態に戻して、恩師とグラウンドで再会する-。金本にとっては新たな刺激となりそうだ。【石田泰隆】

 [2010年10月20日10時53分

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