<西武3-2ヤクルト>◇28日◇西武ドーム

 西武が中島裕之内野手(28)の活躍で逆転勝ちした。6回に好投のヤクルト石川から左越えに同点の7号2ランを放ち、試合の流れをガラリと変えた。7回に銀仁朗捕手(23)の2号ソロで勝ち越して迎えた最終回には、守備で岡本篤を助け勝利に貢献した。交流戦に入り好調の西武は最大8あった借金を完済。勝率を5割に戻した。

 一見すると何でもない空振りが、天才打者の「真骨頂」だった。2点を追う6回無死一塁。中島は少しホームベースから離れて立ち、内寄りの甘い直球に狙いを定めていた。初球。内角高めの136キロ直球に、迷わずバットが出た。しかし、予想に反してカットボールのような軌道でさらに懐へと食い込んできた。「(三邪飛に倒れた)前の打席と同じボール。このまま振ったら凡打になる」。すでにスイングの動作に入っていた。バットの軌道を強引に変えて、わざと空振りした。

 同様の空振りは「これまでにも、たまにありますね」とサラリと言ってのける。天才的な直感で凡打を回避した中島は、カウント2ボール2ストライクからの5球目、外角直球を完璧にとらえた。左中間席への同点2ランを「感触はメッチャ良かった。入ると思ったので、打球の行方は見ていません」と会心の1発を満足そうに振り返った。

 打てる予感はあった。ヤクルト石川からは3年連続4本目のアーチ。前日、帰国中のレッドソックス松坂と会食した際にも活躍を予告していた中島は「たまたまでしょうけど、毎年打たせてもらってますね。試合後に(松坂から)連絡がありましたよ。『あんたスゴイわ』みたいなメールが」と、無邪気に笑った。

 交流戦に入り3割4分2厘、4本塁打、14打点。中島の復調とともにチーム状態も右肩上がりだ。最大8あった借金を約3週間で完済し、4月19日以来の勝率5割。渡辺監督は「(5回までは)石川君の投球術にやられていたけど、ナカジが1球で仕留めたのが大きい。これまでは何とか借金を返そうと思ってやってきたが、明日負けたらしょうがない。貯金を作っていけるように」と、気勢を上げた。【広瀬雷太】