オリオールズ入りが決まったチェン・ウェイン投手(26)が17日、名古屋市中区の中日球団事務所を訪れ、古巣に退団あいさつを行った。チェンは置き土産として、10年ドラフト1位左腕の大野雄大投手(23)をポストチェンに育成すると約束。明日18日から吉見一起投手(27)と福岡で行う合同自主トレで、左腕エースへの道を伝授する。

 さらばドラゴンズ。オリオールズ入りが決まったチェンが台湾から来日し、中日球団事務所でお別れ会見を開いた。これで身も心もメジャーリーガーになる。だが、自分をここまで成長させてくれたチーム、仲間、ファンに感謝は尽きない。竜へのラストメッセージに恩返しの思いを凝縮した。

 チェン

 特に大野ですね。今年(1軍に)出てこられるように、僕が8年間日本で勉強したものを、この2日間で伝えてあげたい。

 10年ドラフト1位の大野が、今日18日から吉見とともに合同自主トレを行う福岡に、チェンも志願して合流する。目的は2日間行う短期合宿。技術から精神面、寝食に至るまで、“チェンのすべて”を大野に伝授しようというのだ。今季は自身が抜けることで、先発ローテに大きな穴が開く。だが穴を開けたままではみんなに申し訳ないし、穴は埋めて行く。その男こそが大野と、自らポストチェンに指名した。

 チェン

 僕の力がどこまであるかはわからないけど、少しでも力になってあげたいんです。大野は僕と似ているところがあるので。

 チェンは06年に左肘手術で育成契約に落ちたが、長いリハビリを経て08年に支配下登録に復活。左の大黒柱に成長した。即戦力と期待された大野も1年目は左肩のケガに泣いた。同じ左腕、同じ故障からの再起。似た境遇をたどる後輩の姿が心を揺さぶった。

 もちろん、落合前監督が昨季、リーグ優勝を懸けた10月の巨人戦で初登板初先発させたほど期待の逸材だ。大野も「盗めるものは全部盗みます」と気合十分。やれば必ずできる男と、チェンも高い潜在能力を見抜いていた。

 チェン

 吉見さんには本当にお世話になりました。これからも聞きたいことがあれば、アメリカから電話するかも知れないですね。

 教える一方で教えも請う。福岡では、リーグを代表するエース吉見と投球動作を解析しながら、成功のノウハウも学ぶ。大リーガーに成長するまで、練習法や考え方に影響を受けた1歳上の先輩だ。昨季の最多勝&最優秀防御率右腕に旅立ち前のラストメッセージをもらい、飛躍の糧にする。

 チェン

 向こうに行っても、自信を持って真っすぐで押せる投手になりたい。そしてドラゴンズが日本シリーズに出ていたら、みんなの野球を見に行きたい。

 中日は去る。だが中日愛は変わらない。願うはリーグ3連覇と日本一。大野や吉見の笑顔もあれば最高だ。竜の進撃を励みに米国で勝負を懸ける【松井清員】