<オープン戦:西武1-3DeNA>◇10日◇西武ドーム

 打った瞬間、それと分かる放物線が西武ファンで埋まった左翼席に到達した。初回、1点を入れてなお1死二塁。昨年オフに西武からトレードで移籍したDeNA後藤武敏内野手(31)が、古巣のエース涌井から2ランを放った。「うまく振り抜けた」と、得意の内角直球を芯で捉え、ドヤ顔でダイヤモンドを1周した。

 オープン戦6戦目で初の4番に座った。中畑清監督(58)の粋な計らいもあったが、後藤の好調な打撃が後押しになった。オフ中に9キロ減量に成功し、パワーよりスイングスピード重視で打球を飛ばすスタイルに切り替えた。キャンプ中は横浜高の同級生で、中日から移籍した小池と毎日最後まで残って特打を続け、フォームを固めた。

 中畑監督は「彼の努力が実を結んだ。今、チームで一番大きいのを期待できる」と評価した。キャンプ中から「横一線」でチーム内の競争をあおってきた。後藤と吉村の一塁手争いだけでなく、この日初めて1番で起用した遊撃手・梶谷も2安打1得点と結果を出すなど猛アピール。選手層に厚みが出てきたことを実感させる大きな1勝だった。

 これで今季初の単独首位に浮上した。「うまくいきすぎて怖いな~。こんなに早く理想に近いものが現実になるなんて。オープン戦だけと言われないようにしないとな」と笑いが止まらなかった。【鳥谷越直子】