<日米親善試合:巨人0-5アスレチックス>◇25日◇東京ドーム

 派手さはないが、輝いた。1軍としては初の本拠地東京ドームでの登板。巨人宮国椋丞(りょうすけ)投手(19)が、アスレチックスとの親善試合で先発し5回9奪三振1失点と好投した。09年WBCキューバ代表のセスペデスを102キロのカーブで空振り三振に仕留めるなど、メジャーリーガーを手玉に取った。5人体制の開幕ローテーション入りは現状では厳しいが、4月中旬以降に必要になる「6番手」での本番デビューを目指す。

 19歳の「イケメン」宮国が、圧巻の奪三振ショーを演じた。1軍初の東京ドームのマウンド。捕手のミットに収まる度に乾いた音が響き渡る。1回、先頭打者ウィークスの内角を突き、見逃し三振でスタートを切ると、2番ペニントンには低めの変化球を振らせて2者連続三振。「緊張しましたが結果にこだわって投げました。変化球が低めに集まったのは良かった」と上々の立ち上がりを振り返った。

 さらに見せ場があった。二塁打と四球で2死一、二塁のピンチを招いたが、平常心は保ったままだった。迎えた打者はキューバ代表として第2回WBCで大会ベストナインにも選ばれているセスペデス。2ボール2ストライクと追い込む。最後は102キロのカーブで体重95・3キロの巨体を完全に崩す、空振り三振でピンチを切り抜けた。緩急を巧みに使い「反省点も多かったけど、自分なりの投球ができました」と、少しだけ誇らしげに胸を張った。

 試合前のロッカールーム。そっと目を閉じ、自分がマウンドに立っている姿をイメージした。思い描いた姿は現実とは正反対のものだった。「僕はすごくマイナス思考なんです。いつも試合に臨む前は大失敗だけをイメージしています。昔からずっとそうですね」。メジャーリーガーとの初対戦はめった打ちを食らうことだけを想像していた。最悪から逆算して、最高を導き出すのが宮国流の方程式だった。

 それは勝負を拒絶したわけではない。「メジャーの試合はほとんど見ない。打者もほとんど知りません。仮にもし知っていても物おじはしません。僕は打たれて当たり前なんで」。逃げずに正面からぶつかり、9奪三振という結果につながった。

 開幕当初は先発投手は5人でスタートを切ることが固まっており、ローテーション入りは極めて厳しい。その上で原監督は「印象は非常にいい。いい材料として、いい階段をのぼっている。今後の彼にとって非常にいい財産になると思う」と、目を細めた。東京ドームのマウンドで華麗に舞う姿をイメージさせるには十分すぎる投球だった。【為田聡史】

 ▼19歳の宮国が5回を投げて9奪三振。秋に行われた日米野球を含め、来日したメジャーチームから9奪三振以上は、84年10月27日川口(広島)がオリオールズ戦で10三振を奪って完封して以来、28年ぶり。巨人の投手では56年10月19日大友がドジャース戦で10奪三振を記録して以来だ。ちなみに、10代の投手がメジャー相手に三振を多く取った例としては、34年11月20日にルース、ゲーリッグらの全米相手に9奪三振の沢村栄治(京都商=17歳9カ月)がいる。