<楽天3-5ロッテ>◇31日◇Kスタ宮城

 ベテランでも尻込みする場面だった。それがロッテのルーキー中後悠平投手(22)のプロ初登板だった。1点リードの8回。ロサの乱調で1死満塁で指名された。変則左腕で球威とキレはあるが、制球難の前評判。西村徳文監督(52)も「オープン戦終盤は制球がよかった。押し出しは仕方ない。監督の責任」と腹をくくる。中後も肝が据わっていた。「オープン戦初先発の方が緊張した。ここを絶対に抑える気持ちが強かった」。堂々と向かった。

 猛打賞の聖沢に外角低めに5球連続スライダー。最後は意表を突く142キロ直球で空振り三振を奪った。続く内村の2球目に内角スライダーが曲がりすぎて空振りしながら右ひざ直撃。「当たってなかったら暴投。助かった」。最後も内角低めのスライダーで空振りさせ、左拳を突き上げた。

 2月、この勇姿は想像できなかった。バント処理練習の投球で2球連続で左打者の背中を通した。「親も見ているので新聞に書かないでください」。対外試合初先発の中日戦では、すっぽ抜けを警戒され、全員右打者を並べられた。だが中後は「味方には投げづらい。敵に投げれば腕を振れる」と言い続けた。西本投手コーチからは「踏み出す右足のつま先をホームへ向けること」と基本を徹底され、制球が向上。中継ぎへの配置転換で集中力も持続できるようになった。

 11年ぶりの開幕連勝。ドラフト1位藤岡が先発する今日1日も勝てば55年ぶりの開幕3連勝だ。同世代で勝利投手となった唐川からウイニングボールをプレゼントされた。「お立ち台の方が緊張して『興奮した』を連発した」。インタビューへの度胸だけは、これからだ。【広重竜太郎】

 ◆中後悠平(なかうしろ・ゆうへい)1989年(平元)9月17日、大阪府生まれ。小5から野球を始め、6年から投手。和歌山・近大新宮高では2年春からベンチ入りし、3年夏県8強。近大では1年春からベンチ入りし2年の日米大学野球から3年連続で大学日本代表。リーグ戦通算19勝13敗。昨秋ドラフトで2位指名された。182センチ、72キロ。左投げ左打ち。