<中日1-0ヤクルト>◇8日◇豊橋

 ゴールデンウイークが明けても、モリミチ劇場だ!

 中日高木守道監督(70)が驚きの投手リレーで、ヤクルトをたたき首位に再浮上した。1-0の9回、守護神岩瀬ではなく浅尾を投入。ヒヤヒヤながら逃げ切った浅尾に今季初セーブがついた。打順変更も当たった70歳の指揮官は、どこまでもエネルギッシュだ。

 70歳のモリミチ采配は、絶対に何かある。だから最後まで目が離せない。首位に立ったこの日の目玉は、大詰め9回の投手起用だった。スコアは最少得点差1-0。先発山井は8回までヤクルト打線を3安打と、ほぼ完璧なピッチングを続けていた。球数も96球と少なく完封目前。高木監督自ら「完全試合やるかと思ったけど」という内容。山井が完全試合目前でマウンドを降りた07年日本シリーズの再現という訳ではないだろうが、思い切って代えた。

 継投が少しの驚きなら、コールされた名前はビッグサプライズ。出てきたのは、絶対的守護神の岩瀬ではなく浅尾だった。浅尾は先頭の田中に四球を与え、犠打と内野ゴロで2死三塁のピンチを背負い、打席には絶好調の4番バレンティン。最後は何とか空振り三振に仕留め今季初セーブを手にしたが、ヒヤヒヤの展開だった。モリミチ劇場は年に1度の愛知・豊橋でも最後に手に汗握る見せ場をつくった。

 岩瀬ではなく浅尾-。伏線は、岩瀬が2点リードの9回に2発を浴びた4日DeNA戦(横浜)にあった。試合後、ファンから「考えろ」とやじられて、指揮官が「考えとるわ、バカヤロー」と果敢に?

 応戦したあの試合だ。高木監督は落ち着いた口調で意図を説明した。

 「横浜の後で、岩瀬のところは田島と浅尾でいって、少し休ませようと思った。その形をとっただけ」

 ファンのヤジで起用法を変えた訳ではない。登板過多だった守護神の負担を減らす一時的な策。配置転換ではなく、バレンティンが出て左打者の川端まで回れば「岩瀬という話はしとった」という。

 継投も含め、一瞬たりとも目が離せない中日の“モリミチ劇場”は、試合前から全開。3番には08年10月5日巨人戦(東京ドーム)以来となる井端を起用。井端は無安打だったが、4番に戻した和田が値千金の決勝打と、激しいタクトが勝利を呼び込んだ。

 ゴールデンウイーク中に衝撃の采配放棄や「バカヤロー」とブチ切れたり、さらには投手ソーサに1発指令…。まるで漫画のように動きまくった中日高木監督は大型連休が終わっても元気いっぱい。首位の原動力は、指揮官のほとばしるエネルギーなのかもしれない。【八反誠】