<中日1-3ロッテ>◇16日◇ナゴヤドーム

 ロッテのセス・グライシンガー投手(36)の投球はエコだった。4回1死。長打警戒の4番和田に2ナッシングから3球勝負を仕掛けた。安全かつ、打ち気を駆り立てる外角低めのカットボールで空振り三振。5回、先頭打者の井端も3球三振。無駄球を抑えて、103球で8回無失点を完成させた。

 球数を少なく、長く投げる。10年に右肘手術を受けてから、思いは強くなった。「今はシーズン序盤だし、100~110球に収めたい。体がおかしくならないように」。今季、1イニングに要した球数は平均13・9球。セ・リーグで2年連続最多勝を獲得した時ですら、07年は15・7球、08年は15・4球だった。解決策は西本投手コーチから封印を解くことを勧められたカーブ。「チェンジアップのイメージが強かったが、幅が広がった」。打者は追い込まれれば球種を絞りにくい。制球のいい右腕に対して早打ちの傾向が強まった。

 現在パ・リーグの奪三振率1位。だが「自分は三振を取る投手ではない。理想は27球での完全試合」。原点となる教えがある。ルーキーのタイガース時代。メジャー通算254勝を挙げたジャック・モリス投手コーチから言われた。「君にはノーラン・ライアンの記録は破れない。打たせて取る投球を覚えなさい」。教えは今も守っている。

 考え自体がエコだ。愛車はハイブリッド車のプリウス。「ガソリンを入れるのも月1、2回で済む」。都内の移動は地下鉄だ。「だって都内の駐車場代は高いだろう?」と笑う。

 9回も1点差だったら続投だったが、点差が広がり自ら降板を希望した。「後の投手を信頼している」。仲間に優しいエコな助っ人右腕だ。【広重竜太郎】